少年冒険家と奇妙な村⑧
クリストファー視点
警備員にベッキーとの関係を聞かれ答えられずに数分。 不審に思ったのか警備員がグイと腕を掴んできた。
「ちょっと!」
「答えないのなら連行します」
「はぁッ!? いや、待って! 僕が何をしたって言うんだよ!!」
自分はベッキー絡みで悪いことをした憶えがない。 確かにベッキーにこの村へ来てはいけないとは言われていた。 しかし、どうやらそうではないらしい。 強制連行となれば返す言葉も荒くなった。
それを聞いてか警備員の言葉も荒くなる。
「ベッキーと繋がりがあること自体が怪しいんだ!」
「はぁ!?」
「何も答えないというのなら村長様の前で跪け」
「一体何をッ・・・」
よく分からないまま無理矢理連れてこさせられた。 体格にして一回りも二回りも違う大人の力には敵わなかったのだ。
―――僕が何をしたって言うんだ・・・。
―――ベッキー姉さんとの繋がりがもしあったとしても、そういうプライベートなことは答えられないのが当たり前だろう?
村長と奥さんであろう女性の前へと連れてこられた。 面識のないはずなのに、対面すると二人は驚いた顔をしていた。
「村長様。 この方がベッキーとの繋がりが」
「ちょっと待ちなさい!!」
「はい?」
警備の言葉を遮り村長は引き出しから一枚の紙を取り出した。 それをクリストファーに見せる。
「・・・僕?」
そこには自分そっくりの者が写っていた。 首を軽く傾げるクリストファーに向かって村長が言う。
「君はもしかして我が娘のアンナか!?」
「娘ぇ!? 僕が村長さんの娘さんだと言うんですか!?」
「そうだ。 だって君はこの絵と瓜二つではないか!!」
「その絵は一体誰が描いたんですか? 娘さんのアンナさんは産まれた時に行方不明になったんですよね? ここまで成長した姿なんて分からないでしょう!?」
紙に描かれているのはギャリーと同じ年くらいの人だった。 少しだけクリストファーよりも大人っぽく見える。 当然アンナが産まれた時の姿が描かれているわけではない。
「これは現在の成長したアンナを想像して描いてもらったものだ。 この村の技術はかなり発展しているからこのくらいは容易いことさ」
「ッ・・・。 そもそも僕は男です! 女じゃありません!!」
「しかし・・・」
「その証拠に僕ここで脱ぎましょうか!? そしたら信じてくれますか!?」
「いや、そこまでは・・・」
村長は困っている。 そこで警備が口を挟んだ。
「村長様、お話を遮り申し訳ありませんが」
「あ、あぁ・・・。 この子と対面するために我々を呼んだんだろう?」
「はい。 彼はベッキーと密会していたんです」
「ベッキーと?」
「はい。 ですから誘拐犯について何か知っているのかと思い連れて参りました」
どうやらこの警備員は村長が持っている成長した姿のアンナの絵は知らなかったそうだ。 もしかしたら村でも立場のある者でしか情報を共有していないのかもしれない。
アンナとそっくりなクリストファーが連れてこられたのは偶然だったのだ。
「どういうことですか? 村長さんとベッキー姉さんの関係は・・・」
「ベッキーは我々のメイドにあたる」
「メイドだって・・・!?」
昔から仲よくしてもらっていたベッキーはこの村の村長のメイドだった。 ベッキーは確実にこの村と深く関わっていたのだ。
―――なのにどうして僕には来ないよう言ってきたんだ?
―――自分がメイドとして働いているのを見られたくないから?
そう疑問を感じつつも他の疑問を尋ねた。
「じゃあ誘拐犯というのは?」
「我々はベッキーがアンナを攫った犯人だと思っているのだ」
「それはどうして・・・」
「アンナがいなくなった日。 その日にベッキーもいなくなったからだ」
その答えにクリストファーは口を噤んだ。 ベッキーに対しての感情がぐちゃぐちゃで自分でも混乱している。
「・・・期待に沿えなくてごめんなさい。 それでも本当に僕は男で村長さんの娘ではありません」
「・・・」
そうハッキリと伝えると村長は悲しそうな表情をした。 その時背後から声がかかる。
「その子は貴方の娘じゃないわ」
振り返ると一人の女性とギャリーがいた。 どこかで見覚えのある女性で顔はどこか自分に似ているが髪型と服装は昼頃に見た誘拐犯と一致した。
―――どうしてお兄さんと誘拐犯がここへ?
疑問に思っていると村長は彼女の顔を見て驚いた表情で問う。
「貴女は・・・」
「私が本当の貴方の娘、アンナよ」
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