少年冒険家と奇妙な村⑨




ギャリー視点



アンナの唐突な告白にギャリーとクリストファーは驚いていた。 特にギャリーは先程まで一緒にいて、人々を連れていった場所を見ている。

村長の娘も誘拐されたと噂を聞いていたし、意味が分からなかった。


「え、貴女が娘さんだったの!?」「誘拐犯じゃなかったの!?」


二人の言葉が被りクリストファーがギャリーに言う。


「って、お兄さん知らずにこの人を連れてきたの!? てっきり娘さんだと分かったから連れてきたのかと・・・」

「いや、彼女は村の人たちを攫う犯人だったから自白させようとして連れてきたんだ!」

「やっぱり君が犯人だったのか。 女性なのにあんなにたくさんの人を運ぶなんて怪力だね」


そのクリストファーの言葉にアンナはムッとして言い返す。


「失礼ね。 ・・・というか、もしかして貴方がクリストファー?」

「そうだけど?」

「本当に私とそっくりじゃない。 失礼しちゃう」

「確かに君はさっき村長さんが見せてくれた絵に似ている・・・。 って、失礼ってどういう意味!?」


二人の間にギャリーは割って入った。


「もう一度聞くけど本当に二人はキョウダイじゃないんだよね?」

「当たり前よ。 私にキョウダイがいるだなんて聞いたことがないもの」

「僕だって!」

「いや、これ程似ているということはキョウダイじゃなくて一卵性の双子になるのか」

「確かにそれくらい似ているのかもしれない。 だけど世の中には自分と似てる人がいる、って言うし」

「双子なら年齢は同じはずだけど、これだけ年齢が離れているのはおかしいわよ。 私はこんな子供と同い年だなんて思いたくないわ」

「そっちこそ失礼だなッ!!」

「ちょっと待ちなさい。 貴女は本当に私の娘なのか?」


話を聞いていた村長が言った。


「・・・えぇ、そうよ」

「この村の人を攫っていたというのは本当か?」

「・・・えぇ」


実の娘が人を攫う犯人だった。 その事実を知り村長は落胆する。


「どうしてそのようなことを・・・」

「・・・私は物心がついた時から隣の街にいたの。 そこで幸せに暮らしていたわ」


やはりアンナは誰かに攫われていたのだと分かった。


「だけど数年前に両親から突然言われたの。 『貴女はカラスに運ばれてきた幸運の子なのよ』って」

「カラス・・・? アンナを攫った犯人がカラスだと言うのか!?」

「私は本当の生みの親が気になって調べたの。 アンナという名は既に付けられていたみたいだから。 カラスがどこから来たのかを調べてその結果この村へ辿り着いた。

 そして村長の娘が行方不明だと聞いてそれは私だとすぐに察したわ」


ならどうして声をかけなかった、という目で村長はアンナを見つめていた。


「・・・だけど私はそれを打ち明けにはいかなかった。 隣町にいる両親が今まで私を育ててくれたのは事実。 それには感謝しているから私にとって本当の親は隣町にいる二人なの」

「・・・」

「だからと言って村長さんたちも放ってはおけなかった。 だからせめて産んでくれたお礼をしたいと思って人を攫ったの」

「・・・それはどうしてだ?」

「この村の秘密を知ったからよ。 ・・・この村の人は皆機械でできているって」

「・・・ッ!」


この場にいる皆はいつの間にか知られていたことに驚いているが一番クリストファーが意味が分からないといった表情で困惑していた。


「それは公にしていないから安心して。 村長さんに私のことを話そうか迷って近付いている時に偶然機械に関する話が聞こえただけなの」

「それがどうして誘拐に繋がる?」

「機械も人間と同じで寿命が来るもの。 動かなくなった機械を直すために連れ去っていたのよ。 ちゃんと直したら返しているでしょ?」

「だから最近の村は元気な人が多いのか・・・!」

「恩返しするために苦手な機械の知識をたくさん学んだわ。 どうして村人が機械なのかは分からないけどね。 これが私の理由よ」


アンナの理由に頷いていると警備員がもう一人の女性を連れてきた。


「村長様、連れて参りました」


皆一斉にその方向を見るとそこにはクリストファーの姉であるベッキーがキョトンとした表情で惚けていた。



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