少年冒険家と奇妙な村⑦
ギャリー視点
意識が少しずつ覚醒する中、呻き声のような声が聞こえてきた。 だが先程までクリストファーと二人でいたはずなのだが、呻き声は女性の声で聞き覚えのないもの。
「ぅ・・・。 重い・・・ッ!」
―――ん・・・?
「どうしてこの人だけこんなに重いのよ!! 体の中に何か入ってるの!?」
確認してみるとどうやら荷車のようなものに乗せられていた。 道が整備されていないためかかなり揺れが激しい。
「あ、あのぉ・・・」
「ひぃッ!!」
話しかけると引っ張っていた彼女は驚いて両手を放す。 支えを失った荷車は当然倒れてしまった。
「痛ッ・・・!」
運悪く地面は土の上だったためかなり痛かった。
「どうして喋っているのよ!?」
「え?」
見上げるとそこにはクリストファーがいた。 だが見た目は確かにクリストファーなのだが声は完全に女性のもの。 口調も女性になっていて口元を隠すその仕草も女性らしかった。
「貴方は壊れたはずでしょ!? なのにどうして喋れるの!!」
「クリストファー・・・? 何を言っているんだ?」
「ク、クリストファー?」
「ここはどこだよ? それにその恰好だって・・・」
「クリストファーって誰?」
服の汚れを払いながら立ち上がると困惑した表情で尋ねられた。
「え? 君のことだけど」
「誰かと勘違いしていない?」
「勘違いだって? ないない! 君はどう見たってクリストファーだ! 声は全然違うけど!!」
「なら違うんじゃない?」
「確かに口調もおかしいし何故か豪華なドレスを着ているけど・・・。 どう見たって顔はクリストファーだ!!」
「顔だけ似てるっていうことじゃない?」
「そう言えば背も高い・・・? って、え? 本当にクリストファーじゃないの?」
「だからそう言っているでしょ?」
「じゃあ君は誰? ここはどこ?」
「・・・」
本当にクリストファーとはただのそっくりさんで別人だと確信した。 辺りを見渡すと機械や道具ばかりがある倉庫へ入ろうとしているところだった。
小屋の中ではベッドの上に横たわっている人を何人も発見する。 そこで先程の光景が蘇った。
「ッ・・・! もしかして君が誘拐犯!? 思えばあの時人を攫っていく犯人の後ろ姿と君の姿、似ているような・・・」
「私に気付いたの!?」
その反応からやはり誘拐犯だと分かった。
―――クリストファーだと疑っていたけど本当に別人のようだな。
―――犯人を見ている時クリストファーは俺の隣にいたはずだから。
彼女は諦めたように言う。
「じゃあ私からも質問いい? 貴方はどうして喋れるの?」
「え? どうしてって・・・」
「貴方は今異常はないの?」
「異常? 身体はどこも悪くないけど」
「本当に?」
彼女はペタペタとギャリーの身体を触り出した。 更には服の中にまで手を入れてくる。
「ちょっと!!」
「おかしい・・・。 ネジが見当たらない」
「ネジ?」
「それに温か過ぎる。 貴方もしかして人間なの?」
「はぁ? 当たり前だろう。 何だよ、その人間じゃない人もいるような言い方は・・・」
「・・・」
彼女が何も言わないことから、ギャリーの予想が正しいのだと理解した。 言われてみれば横たわっている人は死んだり寝たりしているというよりは、人形のようだ。
「・・・え、本当なの?」
そう言うと彼女は涙目で距離を詰めてきた。
「何をしたら黙っていてくれる? 人間じゃないことも、私が村人を攫っていたということも」
「いや」
「黙ってくれるなら何でもするわ。 お金を渡してもいい」
「別に君を脅迫しようだなんて思っていない。 もちろん誘拐犯だったとしたなら見過ごすわけにはいかないけど、村人はただの人間ではないっていうことなんだろう?
それに俺はあの村の人じゃない、ただの観光客だ」
「じゃあ・・・」
「ただ村にはちゃんと説明してほしい。 勝手に村から人がいなくなって村の人たちは困惑しているんだ。 彼らの不安を取り除いてやってほしい」
「それは・・・」
そう言うと彼女はバツが悪そうに視線をそらした。
「君は攫った人を元に返しているんだろう? だから悪い意味で攫っているわけじゃないはずだ」
彼女は観念したかのように目を瞑った。
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