頼義、子四天王に出会うの事(その二)
受付の若者に案内された頼義は陰陽寮の宿舎の中を歩いて行った。
陰陽寮とは内裏にあって天の九星、地の八卦を観察し、また卜占をもって吉凶を占い、帝の
ただし先ほどの受付の若者の言から察するに、それ以外にもなんとも胡散臭い事業に手を出しているようではある。
代々
その晴明翁は齢八十をこえてなお意気軒昂、今だに現役の陰陽師として宮中にも大いに幅を利かせているという。聞くところによると、晴明は狐の
仮にも武人たる兵部省の役人の端くれたる「紅蓮隊」の方々が、なぜにかような怪しげなところに居座っているのか頼義はいぶかしんだが、そうこうしているうちに彼らがたむろしているらしき一室に到着したようであった。
「
のんきにそう言って受付の若者は戸を開いた。六畳ほどの薄暗い部屋の中に、三人の男が寝そべったり
板床には昼間だというのに茶碗に満たした酒が並び、朝市で買い叩いたと
部屋の中頃には
三人は入ってきた頼義に気づき、しばらくの間この男装の少女を
「
とぶっきらぼうに言い放った。
頼義は一瞬、この男のあまりにも傍若無人な態度にムッとして顔をしかめたが、それでも武人としての威厳を損なうまいと深呼吸をして心を落ち着かせた後、こう言い放った。
「私は源
一瞬、ぽかんとした沈黙が続いた。四人の視線が自分に集まって頼義は緊張のあまり身を固くする。するとやがて
「どわーはっはっはっはっは!!!」
という四人の笑い声が部屋中に響き渡った。
「おま、おま、お前が、俺たちの隊長だあ?お前みたいなチンチクリンのガキんちょが!?」
「きき、金平、笑っては失礼じゃないか、ぷ、この子は真面目に言って、ぷぷぷ」
「こ、これは前代未聞でござる、大草原不可避でござる」
「……、……!!」
信じられないほどの大仰さで笑い飛ばされた頼義は、ついに堪りかねて叫んだ。
「な、何事ですかこれは!人が真面目に話をしているのにその態度、無礼にも程がありましょう、それでもあなた達は誇りある帝の臣下ですか、恥を知りなさい!!」
「うるせえ、クソガキ!!」
大男がそれまでの笑い声を吹き飛ばすようなさらなる
「ここはなあ、お前みたいなお嬢ちゃまが遊び半分で来るような所じゃねえんだよ、とっとと帰ってお人形遊びでもしてな」
一時はその怒声に押されて身を引いた頼義であったが、大男の雑言に再び怒りを取り戻し
「お嬢ちゃまとは何です!私は確かに女の身の上ですが、道長様の取り計らいにより帝より正式に男子として、命を受けてここにおります。今の言葉は私に対する侮辱であると同時に帝への侮辱も同然です。撤回しなさい、でなければ上司である責務としてあなたをここで処断いたします!」
頼義は太刀に手をかける。怒りのためか、刃を抜く恐怖のためか、その手は激しく震えている。
「ああーん?俺を斬るかあ?上等だやってみろゴルァ!!」
大男が仁王立ちになる。大きい、六尺(約180センチ)は優に超える偉丈夫である。存外に細身だが肩幅は広く、
頼義は刀に手をかけたものの、まるで人喰い熊に遭遇したかのような威圧感に圧倒されていた。それでも震える膝をどうにか押さえつけ、なけなしの勇気を振り絞って、頼義はいざ、鯉口を切った。
その瞬間
「はい、チェキ〜」
最初に部屋を案内してきたイタチ顔の男がおもむろに頼義の脇に並び立ち、なにやら手鏡のようなものを自分達に向かってかざした。その刹那、手鏡が激しく光り、
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