第27話
「っっっっっ!!なんっっで!知ってんの!!!そのゲームっての怖い!!!」
どうやら片鱗はあったようで、自覚症状もあったというか、もしかして前科でもあるのかと思わせるセドリックの反応に、私とカローラは思わず顔が引きつり、アイビーに至ってはカローラを守るように前に出た。
「……何その目。言っとくけど、まだ誰も閉じ込めてないし、拘束もしてないからね。……人は」
人は。
つまり物程度で収まってると言う事に安心して良いのか。いやでも怖いわ。色々怖いわ。てか自分がヒロインなんですと説明するこの羞恥心、シャルルの時は恐怖心が勝って話してたけど、冷静な状態で話すって、何か色々とそっちの趣味はないんですけどー!!!と叫びたくなる程の心境だったんだけど。
セドリックの反応を見ていると、セドリックの方が羞恥心に殺されそうな状態なので、私は叫ぶのを抑えられた。……セドリックが冷静だったら、きっと私が叫んでたんだろうなぁ。
「シャルルもそんな性癖持ってたんだ……僕の事も当てたって事は、そのゲームにある殿下の性癖もそうだとすると……大変だね」
「だから嫌なんです。お断りします」
セドリックが憐れむような視線をカローラに投げかけると、カローラは本当に嫌だと表情が語る程、嫌悪感を全面に押し出していた。
「うん。分かった。殿下がカローラ嬢に近づかないように殿下情報を渡す事はするよ。他者に魔道具は教えられると思うし、無理そうなら簡易版を何か作ってみるよ。あと……そのコピー機っての興味あるから教えて」
あとはシャルルと相談しながらするからと、羞恥心から一転、何事もなかったかのように話し始めるセドリック。
その内容を聞いたカローラは、じゃあ殿下にエスコートされなくなるとか!もう殿下と会わなくて良いとか出来ますか!?なんて前のめりに聞いていたけれど、エスコートはともかく、殿下には仕事押し付ければ良いし、シャルルならいくらでも仕事作れるし、とサラリと言ったセドリックに若干恐怖した。
社畜として忙殺されるどエスという将来像が見える……。
「まぁ……結果良しとしますか」
アイビーがボソリと私にそう言ってきた為、私も私で首の皮繋がったと安堵の息を漏らしつつ、セドリックにコピー機なるものの説明をカローラと共にしていく。
一人で説明するにも不十分だった箇所があったとしても、カローラが補ってくれる事により、更に詳細をセドリックに語れた為か、セドリック的にも満足そうな顔をして言った。
「二人の事を知れて、こんな発明品教えてもらえるなんて、すごく役得だね。…………性癖バレてたのは何とも言えないけど」
まだ引きずっていたようなセドリックは、満悦な顔をした後に、少しそっぽ向いてしまった。
うん、もう何というか……文句はゲーム開発者に言ってくれ……公に出して神絵師なんてもの引っ張って爆発的に売って広めたのは、そこだけだからね……。買った人にはバレてしまっているのだよ、セドリックよ。
「残すは、王太子ルートと騎士団団長補佐ルートと……公爵ルートですね」
「公爵…………監禁して拘束しとく?世に出してはいけないと思う。ジルベールは……逆らわなければ良いんじゃない?」
「気が合いますね。公爵に関しては私もそう思いますが、問題は王太子ルートだけですので」
ポピーの言葉にセドリックの辛辣とアイビーの言葉が放たれる。アイビーの言葉にセドリックは苦笑しつつカローラを見たが、何か?と言わんばかりのカローラに溜息をついていた。
確かに騎士団長補佐は放置して置いても良いと思うけど、公爵のルートだけは何故作った!?と問い詰めたい。あれはグロ的な意味でのR指定でしかないと思う。
◇
あれから目まぐるしい日々が続いた。
書式や帳簿に関して、前世の知識をシャルルに必要な基礎的部分を伝えると、この国に合わせた独自の物を作り上げ、それを周知させて広めて、作業効率を上げていた。
ただ、簿記に関しては知識が多少必要と言う事で、なかなか市井の商売人にまで広がらないのが現状だけれど、収入と収益の違いが分かるような記帳については徹底させていた。
収入があると思っても、半分以上経費で飛んでたら、利益は少ないもんね。本当、ここ大事。
セドリックに関しても、道具が大きくなったり、少し形は違ったり、耐久度等が変わったりするけれど、冷蔵庫や冷凍庫、コピー機までもが魔術師団で製作出来るようになった。
チョコ作りに使うような道具はウチだけなのだけれど、冷蔵庫や冷凍庫は王族貴族の邸では大喜びだし、お金を持っている飲食店も我先にと購入した。
勿論、コピー機に至ってもそうだ。本の書き写しを仕事としていた人も居たから、出版関係にはそこまで卸してはいなかったけれど、結局書類仕事が多く、会議等も開く必要がある王侯貴族達に飛ぶように売れた。
ちなみに、両方ともまずは自国での運用程度に留まっているだけなのだが、既に他国から問い合わせが来ているそうで……わずか半年程で、ここまで手腕をふるったシャルルとセドリックに尊敬と畏怖を感じる。
何あの二人。流石、攻略対象とでも言うべきなのか?
――ちなみに王太子には“教育の為”としてコピー機は使わせていないらしい。
自分達の仕事は減ったが、王太子の仕事は増える事はあれど減る事はないと胸を張って言っていた二人が味方になってくれて、カローラは心底喜んでいた。
私としても、気がついたらカローラと王太子がセットで現れた!という状況がなくなった為に安心して暮らしてはいたんだけど……。
安心出来るのも、今日までだ。
「……僕、必要?」
「必要!めっちゃ必要!とっても必要!!!側に居て!!!」
馬車の中で固まっていると、同じように固まっていたポピーが口を開いた。
それはそうだ、今現在、私達二人は制服を来た状態で、学園の門に馬車をつけた状態で…………降りようとはしていない。
「……それなら……」
少し頬を赤らませながらポピーはそう答える。
いくら専属従者となってもポピーは平民だ。それを私が無理を言ってポピーまで同じクラスにしてくれと頼み込んだのだから緊張していても無理ないだろう。
……それでもテストで上位の点数を叩き出したらしいけれど……コネ入学ではなく実力でしっかり勝ち取ってるし……。
「行くよ」
そう言ってポピーが馬車のドアを開けて降りるのを、私は必死でしがみついて降りた。
危ない!とか言って身体が傾いた気がしたけど、私的には恐怖心でいっぱいなんだ!!
変な降り方して注目を集めてたら嫌だ!と思いつつも、既に結構な時間止まっていたらしく、後方に少し馬車が待っているのを見ると、迷惑をかけてしまったという罪悪感も出てくる。
……かと言って、歩みを進めるのも怖い!なんて私の心とは裏腹に、無情にも馬車は離れて行ってしまう。
「入学式に遅れるのは、流石にまずいんじゃない?」
「目立ちたくない!これ以上はダメ!!」
そう言ってポピーにしがみつきながら歩を進めて行こうとするが、ポピーは顔を背けながら溜息をついている。
思わず腕を引いて、行くよ、と意思表示をすると。
「あのさ……一応、もう十四なんだし。貴族令嬢が婚約者でもない相手にそうくっついてるのは……」
「問題なし!」
むしろ今すぐ結婚しよう!と言わんばかりに食いつくと、ポピーが若干項垂れた。
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