空を裂く 皓き刃の 無慈悲なる 乞うも願うも 知る由もなし

くうを裂く しろき刃の 無慈悲なる

 乞うも願うも 知るよしもなし



 その日は出先で激しい雷雨に遭遇しました。

 車から降りるのは控えようと、駐車場で嵐が通り過ぎるのを待っていました。

 同時に幾筋もはしる太い縦稲妻に目をみはっていると、突然、閃光と共に頭上で鋭い破裂音が響きました。

 轟音とは違うのです。

 まさに空気が裂けるような鋭い音でした。


 万一あれが自分に落ちたら、ひとたまりもない、などという表現では足りないでしょう。

 雷は自然現象であり、それが為す破壊には一切の意志も情も介在せず、人間側は受け入れるも受け入れないもありません。

 その人が何を思い、何を成してきたか、これから何を為そうとしていたのか、そんなことは雷の前では無意味です。


 その厳然たる事実と、それが毎夏、地域によっては毎日襲い来るという身近さに、畏怖を覚えた瞬間でした。

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