第5話 関係性
長かったようで、終わってみればあっという間にも感じた夏休みが終わり、学校が再開した。
皆それぞれ、進路に向けての準備をしている。
高校を卒業したら付き合うと言う約束の元、俺と涼香は同じ大学を目指すことにした。
特別偏差値が高い大学ではなく、そこそこと言った大学。俺と涼香の学力ならヘマをしなければ問題なく入学出来るような大学。とは言え、漏れがないように勉強は続けた。
「なあなあ白石!」
夏休み明け初日から異常なくらい元気な大城が凸ってきた。
「なんだよ朝から」
「俺さあ、プロチームからオファーが来たんだよ!」
「へえ、そりゃ凄いな」
「いや、反応薄くね?」
「お前は普通にサッカー上手いしキャプテンシーもあるから、もしかしたらとは思ってたし」
「サッカー部の試合とか観に来てたっけ?」
「観に行ってはないな。うちは強豪校だからネットで中継とかあるし」
「そうか」
「で、そのオファーどうするんだ?」
「勿論、受けるぜ。そしたら、進路のこと考えなくて済むからな」
「………。理由が若干心配になるけど」
新学期になると、明らかに関係性が変わっていた俺と涼香のことを根掘り葉掘り聞かれるようになった。
「付き合ってるんでしょ?」
みたいなことを散々聞かれるが、付き合ってないと答える。別に嘘を言っている訳ではなく本当のことだ。ただ付き合っていると捉えられてしまう程、外から見た関係性は大きく変わっているらしい。
新学期初日ということもあり、学校は午前で終わった。涼香と一緒に家に帰ると、涼香の家の扉が開き女の人が出てきた。
「あ、もしかして遥輝くん?」
「は、はい」
「いつも涼香がお世話になってます〜」
どうやら涼香のお母さんらしい。
「いえいえ。こちらこそお世話になってます」
「いつも涼香から聞いてるわよ」
「ちょ、お母さん!そう言うのいいって!」
「はいはい。じゃあお母さんお買い物行って来るからお留守番よろしくね」
この前、涼香から高校生の間だけアイドルをやることを許された話とかを聞く限り、厳しい人なのかと思っていたが、そんなことはなくむしろ凄く優しそうな人だ。
そのまま涼香の家にお邪魔し、一緒に勉強することにした。
しばらく勉強をしていると、涼香のお母さんが買い物から帰ってきた。
「あら、遥輝くん」
「どうも。お邪魔してます」
「涼香は?」
「今、トイレ行ってます」
涼香のお母さんは買ってきた食材を片付けるとソファに腰掛けた。
「二人って付き合ってるの?」
唐突にぶっ飛んだことを聞いてきた。
「え?」
「やけに仲が良さそうだから、付き合ってるのかなって」
「友達以上恋人未満……ですかね」
「涼香って、きっとあまり友達いないでしょ?」
「そうですね、学校では俺以外と話してるのは見かけたことないです」
「家に遊びに来るのも同じアイドルグループの子しかいないから、仲良くしてあげてね」
「ええ、勿論」
そんな話をしてると、涼香が戻ってきた。
「なんの話してたの?」
「うーんとね、涼香と遥輝くんがどこまで進んだのかって話」
「そんな話してたの!?」
「あの、嘘つかないでください。まあ間違っては無いけど」
「間違ってないの!?」
「別に変な話とかはしてないから安心しろ」
そんな他愛のない日々が過ぎていった。
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