第4話 将来

「ええと……、ダメなの?」


「うん」


「でも……好きなんだよね?」


「好きだよ」


「だったら付き合っ―」


「ごめんなさい」


「………」


「ええと、なんで?」


「だって私アイドルだよ?」


「まあ、そうか……そうだよな」


「でも高校卒業したら付き合ってあげる」


「え?」


「私、高校卒業したらアイドル辞めるから」


「そうなの?」


「うん。元々私って高校生の間だけって言う約束でアイドルやってるから」


「それはなんで?」


「小学生の時から本気でアイドルになりたいって思ってたの。中学生の時も。でもお母さんって現実主義者的な所あるから、アイドルじゃ食べていけないって言われてさ。それで両立出来るなら高校生の間だけならしてもいいよって言われて今のグループのオーディション受けたの」


「……俺が口出し出来るようなことじゃ無いかもしれないけど、涼香はアイドル続けたくないのか?」


「うーん、分かんない」


「なんか思ったよりも、軽い感じなんだな」


「うん。二年以上やってるからアイドルなりたい欲が薄れてきたと言うか」


「なるほどなあ」


「でも、それ以上に私は、遥輝くんと一緒にいたいなって……」


俺に顔を見せないように下を向きながら、蚊の鳴くような小さな声で呟いた。

そんな涼香を見ると、俺の方まで恥ずかしくなってきた。

耳を赤くしながらずっと下を向いている涼香の頭をポンポンと優しく叩くと、涼香は顔を上げた。


「もう少しで終わっちゃうだろうけど、花火見よ?」


「うん」


その時の俺は、恋が実ったと言う実感を持ちつつも、まだ恋人と言う関係性にはなれないと言うことが引っかかり、少しモヤモヤとした気持ちで花火を見ていた。涼香と恋人繋ぎをしながら。


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