2/夜に浸かる
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目の前には大きなテーブル。白いレースのテーブルクロスがかけられていて、その上にはたくさんのお皿が並べられている。
お皿の上にはたくさんのご馳走。新鮮な野菜が使われたサラダ。温かいスープ。じゅうじゅうと鉄板の上で音を立てるステーキ。柔らかそうなハンバーグ。食欲をそそる香りの唐揚げ。たくさんの種類のお寿司。
お皿の上にはたくさんのお菓子。可愛いマカロン。真っ赤な苺のショートケーキ。ふわふわのロールケーキ。ナッツがたくさん入ったパウンドケーキ。ころんとした飴玉。ツヤのあるチョコレートたち。
一人ではとても食べきれそうにない量。それでもここにいるのは私だけ。
全部全部、私のもの。
それが嬉しくて、自然と口元が綻んだ。誰にも邪魔されない、一人きりの晩餐会。マナーも何も考えなくていい、美味しくて楽しい食事の時間。
目の前に置かれている料理から、一つずつ順番に食べていく。
まずはフレンチドレッシングがかけられたサラダ。シャキシャキとしたレタスの食感。トマトは歯を立てればぷちりと潰れて中から甘酸っぱい汁が出てきた。
カボチャのスープは甘くて美味しい。一口飲めばもう止まらない。ごくごくと一気に飲み干してしまった。
ナイフとフォークを駆使して、ステーキやハンバーグを食べやすく切っていく。一口サイズにしたそれらを頬張る。柔らかくて肉汁たっぷり。ほんの少しで満足できてしまいそうだけど、それでも食べることはやめられない。お腹はたしかに空いているけれど、空腹を満たしたくて食べてるわけじゃない。ただ、美味しいものが食べたいから。ただ食べることが楽しくて、私は次から次に料理を食べていく。飲み込んでいく。
どれもこれも美味しくて、一人でぺろりと食べ切ってしまった。でもまだ、大好きな甘いものがたくさん残っている。
スープやソースで汚れた口元を拭うこともせず、お菓子が載せられた皿へと手を伸ばす。白くて丸いお皿の上。飴玉を掴もうとして、けれど手を伸ばした先にあったのは飴玉にしてはやけに大きな、白くて、違う、ぱさぱさと、違うこれ——。
「あ、れ」
大きな大きな、人の頭くらい大きな飴玉。甘い甘い砂糖でコーティングされたソレ。けれどもコーティングはどろりと溶け落ちて、中から、それ、違う、私、そんなもの、どうしてここに、それはまるで、頭蓋骨のようで——。
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