第2話(2)

 ケイトは冒険者ギルドへと出向いていた。

 リディアの兄と語っていた男に会い、リディアについて分かった事を話そうと思っている。

 さて、あの鉄仮面はどこにいるのかしら。

 ・・・いた。

 様々な仕事が貼り付けられた掲示板を熱心に見入っている。

 近付くと、振り向きもせずに念話で声を掛けられた。

『魔術探偵か。』

『よく分かったわね、ジン。』

 周りからみれば、二人はただ無言で掲示板を眺めているだけにしか見えない。

『何用だ?

 まさか今になって妹が見つかったわけでもあるまい。』

『見つかったわけではないけど、有力な情報を得られたのよ。』

『有力とは?』

『リディアの今。

 奴隷商“アラクネ”で子供たちを誘拐する仕事をしているそうよ。

 国の情報だから、ほぼ間違いないと思う。』

『・・・そうか、生きていたか。

 しかし、奴隷商の仕事とは愚かな事をしたものだ。』

『・・・依頼はどうする?』

『継続で頼む。

 前金を支払っておこう。』

 ジンは周囲に見えぬ様、ケイトに小さな皮袋を手渡した。

 そして話を続ける。

『奴隷は重罪だ。

 死刑は免れないだろう。

 遺骨になったら引き取ってきてくれ。

 ここで受け取る。』

 覚悟を決めた重い声色だった。

 ケイトはゆっくりと頷く。

『分かった。

 また何か進展したら伝えに来るわ。』

『頼む。』

 ケイトは掲示板を離れ、外へと出た。

 フーッと深い息を吐く。

 あの鉄仮面、妹の現状聞いても最後までブレなかったわね。

 もしかして、なんとなくヤバい事してるかもって気付いてたのかしら。


 イヴは、エルと別れてケイトの元へと向かっていた。

 とりあえずの現状報告と、可能ならこの花を調べてもらおう。

 しかし、ウェストブルッグ家に来てみればケイトは不在。

 代わりにいたのはホエホエだった。

「こんにちわー。」

 わー、じゃないわよ。

 禁断の果実の時もだったけど、なんで見てほしい物を持ってきた時って、ケイトがいなくてこの娘なわけ?

「あのー、ケイトは?」

「お出掛けちゅーでーす!」

 イヴは、最後まで言葉が通じる自信が無かった。

「・・・じゃあ、また後で来ます・・・。」

 去ろうとした時、ホエホエ・・・じゃなくてケイトの妹キャサリンは、イヴの手にしていた物がふと目に入る。

「押し花ですかぁ?」

「あ、なんの花か分からないから、教えてもらおうと思って。」

「じゃあ、イイトコ知ってますよー。」

 キャサリンのこの声は、まるで今から教わるのは、どこかの国のテーマパークなのかしらと錯覚してしまう。

 とりあえず、聞くだけ聞きましょ。

「どこですか?」

「喫茶店アリサの近くにある、家庭用園芸店ポートでーっす!」

「家庭用園芸店?」

 押し花っぽいから、そう思ったのかな?

 ・・・ダメもとで行ってみるか。

「分かったわ、ありがとう。」

「お姉ちゃんの名前を出すとイイですよー。」

「あ、ありがと。」

 そこの花屋さん、ケイトの知り合いなのかしら?

 まあ、ケイトの仕事も絡んでる事だし、名前出すのは問題無いかな。

 ケイトがこの場にいたら、

『絶対にヤメテーぇ!!!』

 と叫びまくっていただろう。

 ここに居なかったのが運のつき。

 ケイトにとって超苦手な人物が、深く関わってしまう事になる。

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