第0.5話 始まり


︎︎︎︎︎︎︎︎❤

白宮しろみやはる、さん……」

 1年生の時、委員会が同じだった。あまり関わることはなかったため、彼は私のことを覚えていないだろう。だが、私ははっきりと覚えている。

 なぜなら、彼がとってもかわいかったからだ!

 男子とは思えないほどのかわいらしい目、爽やかな髪、ぼーっとしたような表情、声……

 そして何より、周りの男子に比べ、身長が低い!

 すごいちっちゃく見える! とってもかわいい!

 そんな彼を、忘れることはできなかった。しかし、彼と関わることは今までになかった。クラスも、小学校も違う。委員会も、特に他の人と話すようなものではなかった。ただ、一方的に認知しただけだった。

 だが、今日、見つけたのだ。彼と関わる方法を。帰り道が同じだったのだ。

 どうして今まで気付くことが出来なかったのだろう。

 ずっと、彼に言いたいことがあったのに。



――翌日

 今日は、授業になかなか集中できなかった。ずっと、この放課後を楽しみにしていたからだ。

 時間になり、昇降口で彼を探した。しかし、彼の姿は見つからない。昨日と同じなら、もう校門から出ているのかもしれない。

 私はその可能性を信じて、昨日と同じ道へ進んだ。

 ……

 ……

 ……

 見つからない。いくら歩いても、いくら走っても見当たらない。

 何がいけなかったのだろう。もしかして、避けられているのだろうか? 急に話しかけたから、変人だと思われているのかもしれない。

 どうすればいいのだろう。謝らなければ。でも、彼は見当たらない。家を探すか? でも、そうするとより一層変人だと思われてしまう。

 だめだ。もうどうしようもない。でも、諦めるのは嫌だ。でも、でも……

 いけない、ネガティブが出てる!

「すぅーーー、はぁーーー」

 深呼吸をした。落ち着かなければ。

 何か仕事があったのかもしれない。ただ、寄り道をしているだけかもしれない。

 また明日、探してみればいい。もしくは、4組の教室に行けばいい。

 今日はもう、帰ろう。まだもう少し、会話の内容を考えることができるかもしれない。

 家に向かって、再び歩き出した。

「……あ」

 その時、前から見覚えのある少年が歩いてきた。

「あ!えっと、朝倉あさくらさん!」

「し、白宮、さん!」

 白宮さんだ。会えた、今日も、会えたんだ。

 嬉しかった。今日1日、ずっと楽しみにしてたんだ。何故か、少し涙が溢れそうだ。

「こんにちは、昨日はありがとうございました。ちゃんとお礼言えてなかったですよね」

 わざわざ、お礼を言うために話しかけてくれたのだろうか。

「あ、朝倉さん? ど、どうかしましたか?!」

「あ、いや、なんでもなくて! 大丈夫、大丈夫です!」

 いつの間にか、涙が溢れていた。何故泣いているのか、自分でもわからない。

 予め考えていた言葉が、全然出てこない。

「そういえば、白宮さんって、この辺に住んでるんですか?」

「えっと、1週間前ぐらい前に引っ越して来ました! 朝倉さんも、この辺に?」

「はい!」

 そうだったのか。よく考えてみれば、小学校が違かったんだ。今まで見つけられなかったのは当然だ。

 しかし、なんという奇跡なのだろう。まさか、私が何も出来ない間に、関わるきっかけができるだなんて。

「あの、白宮さん、せっかくだし、一緒に帰りませんか?」

 心臓の音がうるさい。手汗も酷い。よく頑張った、よく言った、私!

「あ、は、はい! いいですよ!」

 やった! 1歩前に進めた!

 もしかしたら、もっと仲良くなれるかもしれない。もっといい関係になれたら、今までずっと言いたかったことが言えるかもしれない。

「ありがとうございます! じゃあ、行きましょう……あれ、白宮さん、さっき前から来ましたっけ……?」

「あ、それは、引っ越したばかりでこの辺のことがあんまり分からないので、確認しておこうかな〜と思って! なので、僕の家も向こうです!」

「それは良かった! よし、行きましょう!」

 まだ会話がぎこちない。だが、今日の私はよく頑張った。もう、話す理由はできたのだ。

 明日からまた頑張ろう。もっと、白宮さんとの仲を深めよう。

 私たちは、再び歩き出した。

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