友をおもう

紺堂 カヤ

連作ニ十首

笑わずに信じてくれた あのこだけ 幽霊みちゃったあたしのことを


妖精と仲良しだったの ほんとだよ 図書館だけが居場所だったころ


たからもの モモのにおいの消しゴムは誰とおそろいだったんだっけ


「おともだちだからとくべつ」 そのためにいくつのひみつ売り渡したの


タイムマシンがほしい 教室のすみで泣く君なぐさめるためにだけ


恋バナをできずハブられたくなくて 捏造彼氏モリタジュンイチ


友人は恋愛の練習台じゃないんだぞおい聞いてるか


全力で走るおとなになったから 嗤う「おともだち」もういないから


友人の数をかぞえる指先が 私を含めた 安心しちゃった


どしゃぶりに傘を押しつけ走り去る カンタのような友になりたい


友だちのままがよかった 色を変え恋うる光を帯びたまなざし


突然に私を捨てた君のこと 追いかけられない恋じゃないから


ありのままの我に傷をつけられた友は去りゆく 砂をけとばし


元気かな 煙草とドストエフスキーのよさをおしえてくれたあのこ


友だちの嘘を見抜けるようになり 私を大人にしたね友だち


新卒の職場が苦しくなったころ 君の訃報を聞いて泣けずに


高架下 引出物抱き泣くあたしあのこのいちばんじゃなかった知ってた


どうしよう あのこの幸せ願えないことに気づいてしまったあたし


君だけはわかってくれるとおもってた おもすぎたから傷つけたのね


友だちはたくさんいます。……いますよね? 君もあなたも友だちだよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

友をおもう 紺堂 カヤ @kaya-kon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ