第4話 由美の初デート

‐4‐


「あら、若武者のような豊かなポニーテール」

「夜会巻きにでもしてやってください」

 私が言うと、行きつけの美容師さんが腕をまくった。

 ガッツ! やりがい。そんな感じで、私の服とアクセサリー、それにメイクを施されて由美は鏡の中を矯めつ眇めつして覗きこんでいた。

「パーティーですか?」

 良い出来だとは思うけど、納得いくまで見ても、納得しないんだよな女って。

「私、これからデートなんです」

「まあ、そうなんですか。それじゃあ張り切らないと」

「ええ、初めて逢うのでドキドキです」

 一瞬、動きを止めた美容師さんが、雑誌を開いて完全に見ないふりの私の方を見る。

 高齢処女、その自信はどこから来るのっ。プレッシャーくらいは感じなさい!

 大人かわいいマーメイドラインも取り入れた。ベージュの上着もソフトでロマンティック。夜会巻きに真珠のアクセサリー。うむうむ。私のコーディネイトに間違いはない。

 由美、すっかりその気だ。

「決めるわ! 私。大丈夫、彼はいい人。心配はいらない。私は行ける」

 お願いだから、いちいち口に出して宣言しないでよぉ。私の努力が無駄になるっ! 美容師さんが動揺してるじゃない。

 でもまあ、そうね。由美のこんな顔、久々ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る