第3話 コロナが去っても日常は続く。

 汗が引いたので立ち上がり、寝室をあとにしてようやくマスクと手袋を取る。


「う~、薬のおかげで汗疹あせもは消えたのに、やっぱり汗が溜まると手首がめちゃくちゃかゆい……」


 石けんでしっかり洗いながら、つい手首を引っ掻きたくなるのを懸命にこらえる。薬のおかげでブツブツはなくなったけれど、かゆいのは未だ続いているのよね……。


「指の皮むけもひどいからな、ハンドクリームを塗り込んで、と。あー、もう疲れた。なんもやる気が出ねぇ」


 すでに一仕事終えた気満々だけに、原稿もエッセイもなにもかもやりたくないわ。はぁ。


 とはいえ買い物に行かないと冷蔵庫の中身も空っぽだ。なんだかんだ毎日、とは言わずとも二日にいっぺん買い物に行っているような気がする。この物価高時代によくやるわ自分と思いつつ。

 節約しなきゃと思いつつ、節約も結構しんどいというかエネルギーを使うので、それならば稼ぐほうに振り切るべきだと思っているけど、目に見えて儲けが増えたという感じでもないのよね。


「あー、売れてぇ――」


 気づけば最近はそればかり言っているわ。はぁーあ。お仕事ください。


 グチグチ言いつつスーパーに買い物に行き、カツでも揚げるかぁと鶏むね肉を買い込む。

 カツはとんかつよりもチキンカツのほうが好きなの、わたしが。晩飯を作るのはわたしなので、わたしが食べたいものが最優先な我が家です。


 帰宅してのんびりネットサーフィンして、スーパーで買ってきたお弁当を食べて、充分に換気されたであろう寝室にマスクなしで入る。

 消毒した品々をもとあった場所に戻したりしまったりして、居間の布団も寝室へ運び入れた。


「ふぅ、これで、元通り」


 寝室と居間を見渡してふーっと息を吐き出してしまう。

 毎日毎日アホみたいに消毒しまくってがんばったけども、家庭内感染が起こらなくて本当によかった。


 そしてわたしはめちゃくちゃ疲れた。夫にも子供たちにも双方にも気を遣いつつ、最低限の仕事をこなし、仕事のスケジュールも立て直し、ひたすらシュッシュッシュッと消毒をしまくり……。

 おかげで手指は荒れまくって汗疹もできたし。大概いいことはなかったな。


 そうこうするうちにもう下校時間だ。

 はぁ~あ、コロナが去っても娘の登校拒否は去らんし、息子も特性的なものが目立ちはじめているし、やっぱ別にいいことねぇな。

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