第8話 仕事しなきゃ。

 ――2023年6月28日(水)


 隔離生活四日目~。子供たちはもう慣れたもんで、のんびり起きて布団を片づけ、テーブルを運び、朝ご飯を食べ、車で学校へと送られていった。


 そこから夫氏に声をかけ、トイレを済ましてもらって、朝ご飯の用意。あとはもう回復するだけだと思うので、どんぶり型の使い捨て食器にいつもと同じくらいの量のご飯を盛った。


「あの、ゆかさん、あんまり注文する立場じゃないとわかっているんだけど、お願いしていい?」

「ん? なんだい?」

「あのね、この食器ね……ご飯がめちゃくちゃくっつくんだよ。だからご飯を盛る前にラップとか敷いてくれると嬉しい」

「な、なんだってー!?」


 そこは盲点だったわ。どうやらご飯粒が食器の内側についちゃって、全然取れなくなっちゃうらしい。ご飯粒を残すの許すまじ派の夫、これが地味にストレスだった模様。


「気づかずにすまんかった。次からそうするわ」

「ホントごめんね。よろしく」


 これは災害時でも応用できそうなライフハックやね。使い捨て食器は米粒がくっついちゃうからラップを敷け、と。メモメモ。


 朝の家事を終わらせ、ふぅっと言いながらノートPCの前に座り込む。なんだか朝から疲れているなぁ。これだけの湿気だから、季節的なものもあるんだろうけど。


(でもやっぱり一番はコロナの家族が家にいるストレスだよなぁ。今のところ感染している症状はないとはいえ……)


 熱が出るわけでも喉が痛いわけでもないから大丈夫だろうと思いつつ……それでもちょっと不調があるとすぐ感染しているんじゃないかと思ってしまうのが、またすごくストレスだったりする。


「っていうか、昨日は悠長に『来週お返しします~』って担当様にメールしたけど、実際に感染したら、わたしなんか一週間は余裕で使い物にならなくなる気がする……」


 フォロワーの作家様にも何名かコロナに罹って、後遺症で苦しんでいる方がいらっしゃるのだ。咳が一ヶ月止まらないとか、めまいがひどくてPC画面を見ていられないとか、ブレインフォグで文章が全然まとまらないとか。

 自分がそういう事態になったら、来週戻しますとメールした校正、絶対に戻せなくなるんじゃないかな……?


「つまり今のんびり休憩している場合じゃないってことだ。むしろ早く校正終わらせて担当様にお戻ししないと!」


 ごく当たり前のことに今さらながら気がついて、うわーんと泣きたい気持ちでWordファイルを開く。

 途中お昼ご飯の用意をするときと食べるとき以外は(本日はパスタだぜぃ)ほぼほぼノートPCに向き合い、10万字ぶんの校正を一気に終わらせた。


 本来なら最低でももう一回見直したほうがいいのだが、校正原稿をこちらに留めておくことで、逆に提出が遅れるような事態になるのは絶対に避けたい。


 ということで担当様に「昨日の今日ですみませんが、校正終わったのでお戻しします」と校正原稿を送付。はぁ、直し指示がほぼない原稿だからなんとかなったとはいえ……。


 だがこうして集中してひたすらがんばっちゃったせいか、夕方には一気に体調が悪くなってしまった。

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