第7話 暑いのだけでもどうにかなってほしい。
風呂掃除を終えてビニール手袋とマスクを外し、入念に二度手洗いしてから居間に戻る。
「あぁぁあ~、クーラーの風が涼しいぃぃ~」
と両腕を広げて歓喜する母に対し、
「ママ、すっごい消毒臭い」
と容赦なく言ってくる娘。ちっ、おまえには思いやりの心はないんかい。
「風呂場を全部消毒していたのさ。暑かったよ~」
「それはお疲れ」
「ということでそろそろ21時だ。タブレットとゲームはおしまいにしなさい。ほら布団敷くよ~」
「はーい」
ということで机を脇に避け、クッションやら椅子やらをダイニングに運び、布団を二枚敷く。ここでの就寝も慣れてきたものよ。
「パパまだ熱あるの?」
「ううん、お薬が効いてもう熱は下がったよ。でもまだ喉が痛いし、ほら、咳も聞こえるでしょう?」
「ホントだ」
折良く? 夫が咳をする声が壁というより互いに開けっぱなしにしている窓から入ってきた。
ずっと咳き込んでいるという感じではないけれど、思い出したときに咳をするのが続いているんだよな、夫。
「それにウイルスは10日はほかのひとに移る可能性が高いからさ。まだ別の部屋で過ごす感じだね」
「えぇ~、パパに会いたいよぅ~。でもコロナが移るのはやだよぅ~」
二つの感情で揺れる娘である。一方の息子はパパに会えない寂寥など欠片も感じていないらしく「もう眠いから静かにして」とこっちを叱ってくる始末。
そうして息子がスヤァと寝入ってから、娘とちょいちょい寝る前のおしゃべりを楽しみ、娘も寝たのを確認してから、わたしはマスク二重、ビニール手袋、消毒液とダスターのお馴染みセットで寝室へ。
「消灯時間でーす。トイレに行ってくれぃ」
「うい~……ごめん、またちょっと大のほうで籠もる」
「わかった」
薬の副作用すごいなぁと思いつつ。
しかし夫が大をひねり出すまでどれくらいの時間がかかるかわからないから、こっちも蒸し暑い中、ビニール手袋とマスクという完全防備でただただ待っていないといけないから、なんというか……虚無。とにかく暑い。つらい。そして眠い。
10分くらいで夫が出てきたので、飲み物とか大丈夫か聞いて、おやすみなさいと挨拶。
こうして無事に隔離生活三日目も終了。なんか汗ばんでいるせいか、ビニール手袋の入り口があたる、手首あたりがかゆくなってきたなぁ……。
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