第3話 ペンは剣よりも強し。
「昨日はあちこち出かけちゃって、こうして一人PCの前に座ってのんびりという時間はなかったもんなぁ。仕事のメールきていないか確認しておくか……って、のおおお!」
先週の金曜遅くにきたメールがあったのを忘れていたぁあああ! もう今日は火曜日じゃん! せめて思い出したのが昨日だったらよかったんだけども。
「ああ、そうか5月末〆切で死ぬ気で書いた原稿の校正依頼か。うーん、急ぎの返事は必要なさげだけどな……」
コロナ療養中の夫を世話しているという微妙な危険にあるからな、今のわたし。なにもなければ見直しは来週には渡せるだろうけども。
「ということを一応返信しておこう。ええと『来週にはお戻しできると思いますが、夫がコロナ療養中で、わたしも感染する可能性が……』と」
メールを送信、戻ってきた原稿ファイルはデスクトップに保存、と。
見る限りそこまでバッチリ赤が入っているところはないから、書き直しはほぼなしでいけるかな。
「はぁ、久々に原稿でもやるかなぁ……でも全然気分が乗らない。あ、ブログを書くほうがいいかな?」
夫がコロナになりまして~みたいな記事を上げておくか。
もしわたしがTwitterにも出現しなくなったときに、関係各社がブログからでも原因を突き止められるように。
……と思って書いていたけど……あれ……? おかしいな……?
「ただ『夫がコロナに感染しました』って書くだけでいいのに、気づけばそれがいかに大変なことかの恨みつらみが止まらなくなってきちゃったな?」
思い返される先週の金曜日の発熱したのLIME……そこからあれこれ心配して、調べて、片付けて、用意して、消毒しまくって……の日々が走馬灯のようにぐるぐるぐるぐるっと頭を駆け抜けていき、同時にムカつく気持ちがむくむく湧き上がってきた。
「……駄目だ、この気持ちはブログのお知らせ記事なんかじゃあ昇華できないぜ。日々あまりに消毒しすぎてキェエエエってなっているこの気持ちは、もっと正しく文章化しないと絶対に晴らせねぇと作家の本能が言っている!」
ってわけで、気がついたら家族の現在の様子から夫が社員旅行に行ったことまで、一気に1万字近く一太郎に書き殴っていたわ。
「書けば書くほどムカついてきたああああ! コロナなんか持ってきやがってぇええ! 純粋に働きに行って移ってきたならしかたがないが、社員旅行だぞ!? ひとにワンオペ育児させておいて、自分は五日も六日も沖縄でウェーイしてきて、挙げ句のコロナ感染だぁああ――ッ!?」
考えるだけで腹が立つぅ! 断じて許すまじッ!
「これ今すぐエッセイにまとめて、絶対ネットに流してやらぁあああ――ッ!!」
――そうして現在、皆様がお読みになっているこのエッセイが生まれたわけです。
作家に恨みなんて持たせるもんじゃないよ。こうやって書かれて世界中に公開されちゃうんだから。SNS発展がめざましい現代、ペンは剣よりも強しである。
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