第四章 回復する夫、不調になる妻。
第1話 夫、タフネス。
――2023年6月27日(火)。
「ママ、今日は遅刻がいい……」
布団から起き上がったものの死にそうな顔の娘。
(出ーたよ、娘の学校行きたくない病。ちっ)
もはや定期となりつつあるけども。
普段ならわたしも仕事があるので「行けや~」と半ば切れがちに言うけど、夫が家にいて自分も家を空けられない状況だけに、仕事も進みやしないから、まぁいいかという気分になってくる。
「中休みから行っていい?」
「せめて二時間目からにしなさい」
「ええぇぇえ~?」
「あ、やっぱり朝の会から行く?」
「あ、二時間目からでいいです」
というわけで二時間目の開始少し前という時間に学校へ車で送っていく。息子はちゃんと朝から行っているというのに。やれやれ。
帰ってきて夫氏のところに顔を出すと、普通に起き上がってスマホをいじっていた。
「熱はすっかり下がったねぇ。喉の痛みはどうよ?」
「ん~まだ痛いけど多少はよくなった感じかなぁ。今日は会社も休みだって」
「お、ほぼ全員がコロナ感染したからか」
「そんな感じ。事務の女性陣は旅行に不参加だったから大丈夫だったけど、その他はほぼ全員発熱中」
やだ~、全滅やん。まぁ社員旅行で全員が沖縄に行っていたし、帰りの飛行機もバスも一緒だったんだから、そりゃそうなるよね。
「今日は専務も熱出ちゃって、検査キットで陽性出たって」
「現場トップがそれで、全員動けないんじゃ工場もそりゃ閉まるわな」
「納期がわりとヤバイ気がするんだけどねぇ……」
安心しろ。わたしの仕事も君のコロナのおかげで停滞気味だ。ちっ。
「で、専務から『明日から出られそう?』ってLIMEきてるんだけども」
「はあ? 無理無理無理、医者だって発症から5日は休めって行っていたし、無理して後遺症が残ったらどうするの。最低でも5日はゆっくり休まないと駄目。木曜まで療養しなさい。喉が痛すぎてホント無理って返信しなさい。どのみち腰が痛くて立ち上がるたびにふらついてんじゃん」
「腰が痛いのは寝過ぎだとは思うんだけどね……」
どちらかというとショートスリーパーの夫、長時間横になっているなぜか腰痛を発症するという残念な体質もあり、うっかり寝過ごしたり長く昼寝をしたりすると、もれなく腰の調子を崩すのだ。
これはコロナにかかわらず以前からそうだったのだけど、それにしても今回の腰痛は本当にひどそう。
普段わずらっているところが特に痛くなる副作用でもあんのか、新型コロナウイルスさんよぅ?
「とにかく熱が下がってきて動きたい気持ちはあると思いますが、わたしの目の黒いうちはしっかり5日間療養していただきます。木曜までは仕事は休み。そしてウイルス排出は10日間続くので、来週の火曜日まで君はこの部屋にもれなく隔離だ。肝に銘じよ」
「へーい……」
多少不満というかがっかりな感じが見えるが、夫も自分がコロナをもらってきたおかげで家族が迷惑しているのは重々承知しているのだろう。反抗的なことは言わずにうなずいていた。
酸素濃度も昨日と変わらず98で異常なし。発熱と頭痛が治まったおかげでずいぶん楽になったようで、それに関しては本当によかった、よかった。
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