第3話 薬だけでも出してくれぇ……!
ぶっちゃけ診察はね、もう『コロナ陽性』って検査薬で出ているし、必要ないと思うのよ。本人、立つのもつらそうでふらふらだから、診察に連れていくのも面倒と言えば面倒だし。むしろそれで悪化しても困るし。
ということで「お薬だけでも」と言ってみたが、受付のお姉さんは『まずは症状を聞かせてください』と言ってきた。
『お熱かなり高い感じですが、症状が出たのはいつ頃ですか?』
「土曜日の夕方です」
『ほかに症状はありますか?』
「喉の痛みがひどいのと、全身の倦怠感と関節痛、腰も痛いみたいで。あとはたまに痰が絡んで咳が出るのと、頭痛も少しあるみたいです」
『わかりました。ちょっと先生に確認してみますので、折り返しのお電話をさせていただいてよろしいですか? ええと今お話になっているのは奥様……?』
「そうです」
『では奥様にお電話する感じでよろしいでしょうか?』
「はい、大丈夫です。電話番号、言ったほうが……?」
『お願いします』
「はい、090……」
って感じで番号を伝えると『では少々お待ちください』と電話はいったん切られた。
ふぅ、今コロナに限らずいろいろな病気がはやりだしているから、外来も混んでいるかなぁ。
折り返しの電話も結構待たされるのかなぁ、と性懲りもなくTwitterでつぶやいた直後、内科から電話がきた。
『佐倉さんの奥様のお電話で間違いないですか? 看護師なんですが、すみません、もう一回旦那さんの症状を聞かせていただいていいですか?』
ということで看護師さん相手に夫の症状を々説明する。
『ええと、旦那さんは診察希望ですか? 診察したほうがいい?』
「あー……その気になれば連れて行くことはできますが、ちょっと起き上がるのもしんどそうなので」
『熱が高いですもんね~。あと旦那さん、コロナのワクチンは受けていますか?』
「はい」
『何回?』
「4回です」
わたしも子供たちも4回受けた記憶があるし、夫も当然4回のハズ。
『最後の4回目を打ったのがいつかはわかりますか?』
……ハッ! しくった! かかりつけ医にワクチンをいつ打ったか聞かれるだろうから調べておかなくちゃと、ちゃんと考えていたのに! 調べるのめっちゃ忘れてた!
「す、すみません、ちょっと待ってください確認しています。ええと接種券をまとめたファイルがあるから……!」
市から届いた接種証明書になるアレ、確か全員分をファイルにしまっていたはずだと、スマホを片手にあわてて戸棚をひっくり返す。
そしてファイルを出したけど、なぜか夫の奴は三回目までのしか存在しない!
「おっかしいな、どこかにあると思うんですが……!」
『うふふ、大丈夫ですよ。来院するときに教えていただければいいので』
「すみません、必ず調べて行きますので……!」
あぁん、肝心なところで恥ずかしい~!
『旦那さん、今おいくつですか?』
「35歳です」
『なにか持病はありますか? 飲んでいるお薬は?』
「ないです!」
『お酒飲まれたり……』
「ないです!」
『タバコは……』
「ないです!」
恥ずかしさをごまかしたいのと、なんとか薬の処方にこぎ着けたくて、こっちも必死にバシバシ回答する。
そして看護師さんが今一度先生に確認し「では奥様だけいらしてください」と言われた。
『すぐこられます?』
「はい! 10分で行けます!」
『では来院したら受付にお名前を言ってくださいね~』
ということで、さぁ Twitterを見ている場合じゃないぜ画面を閉じるぜ。夫の財布から保険証を探し出すぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます