第14話 疲労しかねぇ。
「ほらそろそろ21時だから、寝る用意するよ~」
「ママ、ここで寝るの?」
「そうだよ。寝室はパパ専用室になってるからね。パパのコロナが治るまで、うちらはこっちで寝起きだよ」
ということで、長めの座椅子と座布団はダイニングに運び、こたつテーブルは立てて部屋の端っこに寄せておく。
ぽっかり空いたスペースに敷き布団を二枚並べ、わたしを真ん中にして川の字の寝床が完成だぜ。
「ママ暑い~」
「はいはい、クーラーつけておこうね。確かに湿気がひどいよなぁ。除湿でもいい気がするけど、やっぱ暑いから冷房だよなぁ」
ピッピッと温度を調整しつつ、全員で順番にトイレに入り、わたしは必死にトイレ掃除と消毒をする。子供たちはそのあいだ、真っ暗になった居間という特別シチュエーションにきゃっきゃっとはしゃいでいた。
「ママ、明日から学校行ける?」
「朝のうちに学校に電話して聞いてみるよ。たぶん行けると思うよ」
息子の問いに答えると、娘が途端にぶすくれる。
「ええ~、学校やだぁ。コロナ怖いぃぃ」
「コロナになっているパパのいる家にいるほうが、コロナになる確率高いと思うよ」
「あ、学校行きます」
行くのかよ。コロッと判断しやがったな。行かないよりいいけど。
(そう考えると夫がコロナになったのが今でよかったような、悪かったような。5類になる前の時期って、○子もそうとう不安定になっていて、方々に相談しまくっていた時期だからなぁ)
あの時期に家にコロナの人間がいるとなったら、娘のストレス値がさらに大変なことになっていたであろう。
当然、わたしもどこにも相談に行けず、息子も学校に行けないから、この家の中はストレスで埋め尽くされていたに違いない。
「とにかく明日は学校に行く前提で、さっさと寝なさい。ほら寝ろ、寝ろ~」
「そんな呪文みたいに言わないでよ」
わりとコロッと寝る息子と違って、娘は30分くらいわたしと雑談しないと眠れないようで、この日もひそひそと雑談が続く。
ようやく寝たときには22時近くになっていて、わたしはそっとダイニングに移動し、ビニール手袋にマスク二重、消毒スプレーとタオルという装備で、夫のもとへ。
「消灯時間でーす。トイレ大丈夫」
「んー……行っておこうかな」
むくりと起き上がり、ふらつきまくる夫。ずっと寝ているから三半規管も狂いだしているのか、普通に壁にぶつかっていた。
「脱衣所とトイレの扉は開けっぱなしにしておくし、トイレの電気もつけっぱなしにしておく。もし夜中にトイレに行きたくなったら、なるべくあちこちさわらず、やむなくさわったところは除菌シートで拭いておいてくれ」
「ういー……」
「明日になったら、かかりつけの内科に電話で薬もらえないか聞いてみるから」
「んー……」
元気のない返事をしつつ夫は寝室へ消えていく。
わたしは再びトイレに戻って消毒、掃除、消毒、手洗い、消毒、手洗い……とひたすらくり返し。
もう本当に、一日が消毒まみれすぎて疲れてしまった。
(これがまだ一日目なんだよなぁ。つらぁ~……)
子供たちが学校に行ってくれれば違うと思うんだけど、もし「こないでください」とか言われたらマジでどうしよう。
若干の不安を抱えつつ、とりあえずわたしも寝た。疲れたー……。
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