オタクを殺す海の巨人
深海に潜む巨人は、昔からアニメ・マニアを加害したいと思っていた。別に嫌いでも憎い訳でもないのだが、とにかく殺したかった。
「アニ豚殺して〜」
巨人の頭は夏目漱石の脳みそ五百個分の大きさであり、その声は男性アイドルのように高かった。あまりに異質なオーラを発しているので、他の深海生物たちは近寄りがたいと思っていた。そんな彼にも、一応の友人がいた。人生津見神である。
「どうしたん」
「アニ豚を殺したいんだよ」
「何人くらい?」
「全員」
「日本を滅ぼす方が早いことだよ」
「一理あるな」
巨人は立ち上がり、ウオミング・アップをした。全身から加害欲と闘気が漲り、並々ならぬファイターとして瞬時に全生物を威圧した。
「でも、貴方にとっても不都合があることだよ。日本を滅ぼしたら漫画を読めなくなることだよ」
「これからはアメ・コミっしょ」
巨人は遠い星の魔術を用いて浮上し、太平洋に上半身を露出する。そして腕をぐるぐる回すことで津波を起こし、回転の勢いに任せて本土を連続殴打した。
「ぎゃー」
日本に住む日本人は全員死亡し、本州は踏んづけたクッキーのようにバラバラになった。彼の目的は達成されたのである。
「でも、アニ豚を殺した感なかったな。もっとアニ豚の泣き声が聞きたかった」
巨人はシアトルで大量のアメリカン・コミックを買い込み、深海の住まいで読もうとした。だが、その夢は叶わなかった。
「英語読めねえんだけど」
「津んだね」
巨人は高身長でバリバリモテていたリュウグウノツカイを拉致して、海上に浮上した。窒息死したガイシャを円形にして雲に引っかけると、そのまま自身の首をお吊りになられた。太古より生きた海の巨人は死んだのだ。
「上位存在の自殺エロ!」
「今晩のオカズはこれだね」
沖縄のアニメ・マニアたちが喜んだのは当然といえよう。
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