15.初めてのボス戦その3
「グガァァァ!!!」
ゴブリンロードが棍棒を作り、それを構えて突進する。
5m程の巨体の割に素早い動きだ。
俺と同速、レオナルドより少し遅いぐらいか。
「させないよ!」
レオナルドが短剣で受け止めるつもりだ。
ゴブリンロードは勢いを緩めるどころか加速させ、レイナルドに突っ込んだ。
「ぐっ!? 抑えきれないっ!」
レオナルドは吹っ飛ばされ、後ろの木に叩きつけられた。
ゴブリンロードは止まることなく進み続ける。
「〈
「〈
アランの矢とジェイルさんの鎖がゴブリンロードの足に当たり、体勢が崩れた。
足を集中攻撃され、ゴブリンロードは地面に勢いよく頭を突っ込んだ。
ゴブリンロードが無防備に頭を晒しているところに、いつの間にかレオナルドが迫っていた。
「はぁぁぁっ!」
レオナルドの短剣は綺麗にゴブリンロードの首を撫でた。
「硬すぎる! 1番柔らかい首筋でこの硬さなんて!」
ゴブリンロードの首には小さい傷ができている。
皮膚は切れているが、筋肉にまでは通らなかったのだろう。
ゴブリンロードは斬られたことに怒り、頭を振り回した。
だが、首筋を斬ってすぐに引いたレオナルドには当然当たらなかった。
「あのゴブリンにダメージを出せるのはランバー君しかいない。彼女の方が終わるまで、私達は時間稼ぎといこう」
「そうだね……ランバーには早く終わらせて欲しいけど、こっちもギリギリだ」
「うむ……」
「おっと、ゴブリンも落ち着いたみたいだ。僕を狙っているのか。皮が切れた程度でも、痛みはあったのかな?」
「グガァァァ!」
すごい光景だ。
ゴブリンロードの猛攻に、レオナルドは全て避けることで対応している。
短剣で受け流すことは不可能だと判断したのか。
しかも、突進攻撃をさせないように、常にゴブリンロードの近くに留まっていた。
そして、それをサポートするように飛ぶ矢と魔法がこの戦いの均衡を保っていた。
適切にゴブリンロードを妨害することで、レオナルドも何とか避けきれているのだ。
ランバーさんの方はと言うと。
「死ねぇぇぇぇ!!!」
「グギィッ!?」
血走った目をしたランバーさんがエリートゴブリンシャーマンを追い回していた。
エリートゴブリンシャーマンも強いはずなのに、防戦一方になっている。
いずれ倒せるだろうが、レオナルド達のことを考えると早いに越したことはない。
「ランバーさん! 僕が動きを止めます!」
「! 分かった」
必要なのは攻撃ではなく、妨害だ。
見たところ、エリートゴブリンシャーマンの動きは速いわけでも技術がある訳でもない。
ただ、色んな流派が混ざったようなぐちゃぐちゃな動きが先読みしづらくさせているようだ。
だったら、動く前に封じてしまえばいいだけだ。
ランバーさんが斧を振りかぶり、エリートゴブリンシャーマンが動く、この瞬間だ!
「縛れ!」
地面から土の手が生え、エリートゴブリンシャーマンの足を掴んだ。
エリートゴブリンシャーマンは突然の事に驚き、固まる。
ただでさえ防戦一方だった所に、その硬直はあまりに致命的だった。
エリートゴブリンシャーマンは逃げることができずに、斧の餌食となった。
「ありがとう、カイン」
「いえ、それよりもあっちをお願いします。ランバーさんじゃないとあいつの筋肉を貫けない」
「あぁ、これは確かに骨が折れそうだね」
ランバーさんはレオナルドさんの方に行った。
そのおかげで、少し安定したようだ。
ランバーさんがゴブリンロードの攻撃を受け止められるのが大きな要因だろう。
「さすがランバー、よく受け止められるね」
「私は大丈夫でも、斧が危ない。攻撃以外に使うのは避けたい」
ランバーさんがゴブリンロードの右足に攻撃する度に、ゴブリンロードの動きが鈍くなっていく。
それと同時にランバーさんの斧もダメージが入っているようだ。
「足を崩したら一気に決める」
「分かった。囮は任せてくれ」
レオナルドがゴブリンロードの気を引き、ランバーさんへの警戒が薄れる。
「〈
アランの放った矢がゴブリンロードの顔に当たり、爆発を起こした。
ゴブリンロードが煩わしそうに、顔面の煙を飛ばす。
「ッ!」
今この瞬間、ゴブリンロードはランバーさんを警戒できていない。
ランバーさんが、幾度と傷をつけられボロボロになった右足に、最後の一撃を当てた。
「グガァァッ!?」
ゴブリンロードが悲鳴をあげて膝をついた。
ゴブリンロードの首はランバーさんの斧が届く高さにある。
「なっ!?」
「これは…!?」
危険を感じたのか、ゴブリンロードは棍棒を杖にして顔を上げた。
それによって、首も届く高さでは無くなってしまった。
なんとかしないと……。レオナルドやランバーさんは言わずもがな、アランやジェイルさんもかなり消耗している。
ここで仕留めきれないと負ける!
何か俺に出来ることは……待てよ、これなら!
「ランバーさん、僕が道を作ります!」
「……分かった、信じる」
「カイン、なんとかできるのかい!?」
「ぶっつけ本番ですが……やらなければ負けるでしょう」
集中しろ、イメージだ。
〈精霊術LV2〉はより強固なイメージをすることで安定する。
ランバーさんの踏み込みに耐えられるような、そんな力強い道を作るんだ!
「伸びろ!!!」
地面が隆起し、ゴブリンロードの首筋へ道が生まれる。
「今です! 行ってください!」
「ッ!」
ランバーさんが駆ける。
あまりの踏み込みの強さで生まれた風に、体が持っていかれそうだ。
上り坂となっている道をものともせず、それどころか加速していく。
ゴブリンロードが迫りくる死から逃れようと身をよじらせようとした。
その時には、ゴブリンロードの首は飛んでいた。
恐怖と驚きにまみれ、見開かれた眼球と目が合う。
「……!」
そして、ゴブリンロードは煙になった。
残ったのは、大きな魔石だけだった。
転生は必ずしも良いとは限らない 小者 @zyouki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生は必ずしも良いとは限らないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
マトリョーシカ/小者
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます