10.ドキドキ!ザワつく鑑定式!
なんやかんやあって7歳になりました。
狩りを初めてから約2年、修行から帰ってきたアランに稽古を付けてもらおうとして死にかけたり、近所の子と仲良くなったり、ミニイベントをこなしてきた。
本当にあっという間だった。
そして今日、7歳になってから初の新年を迎える。
つまり、鑑定式をやるということだ。
この日のために〈隠蔽LV1〉〈変装LV1〉も沢山使ってスキルレベルを上げまくった。
もちろん、レベル上げもかかさないようにゴブリンを倒しまくった。
そのせいで、ステータスをどこまで偽装するか迷ったんだけどな。
「カイン、行くよ」
「うん」
母さんとは、この2年で一緒に遊んだりして仲が深まったと思う。
一緒に走り回って楽しそうな母さんを見た時は、俺は全然母さんのことを見てなかったんだと思った。
でも、今は違うと思いたい。
「カルちゃん、忘れ物はない?」
「カメラは2台あるし、寄付金もちゃんとある。全部あるよ」
「それじゃあ行こうか。B3の人を待たせる訳にもいかないしね」
B3というのは住所のようなものだ。
庶民は名字を持たないから、家族全体の事を言う時には住所を使って言う。
歩き出して1分くらいでB3に着いた。近所だしな。
B3には既に3人がいた。
「ダインさん、カルミネさん、おはようございます〜。カインくんもおはよう〜」
のんびりした口調の女性がアンリさん。
「…おはよう」
寡黙な強面の男性がライさん。
「おはようカイン! 早く行くぞ!」
そして、この落ち着きがない子がアイリ。
俺と同じく7歳で、鑑定式を一緒に受けることになる。
最近は家族ぐるみで遊んでいるのもあり、懐かれている。
アンリさんとライさんに挨拶を返すと、アイリに手を捕まれた。
「教会まで競走だ!」
「そんな急がなくてもよくなあぁぁぁぁぁ!!!」
強くなったステータスも、アイリには何の意味もなかった。
「あらあら、アイリったら。余程カインくんと会えて嬉しいみたいね〜」
「…うむ」
「元気なのは良いことです。カインは直ぐに狩りに行くから同年代の友達もアイリちゃんしかいないので、引っ張ってくれてありがたいです」
「あはは、カインも大変そうだね…」
「私達も行きましょうか」
「えぇ、そうです」
「カルちゃん…無理して敬語使わなくても…あいたっ」
♢♢♢
鑑定式とは、ステータスを鑑定士によって鑑定してもらうことで、自分でステータスを見れるようにする1回目と、能力を確認して就職先を決める2回目がある。
7歳で1回目の鑑定式を迎え、2回目の鑑定式が行われる15歳までにレベルを上げて良い所に就職しよう、ということだ。
1回目の鑑定式では、教会が用意した瀕死の魔物を倒し、無職のレベルが5になるようにする。
その後、鑑定士に鑑定してもらい、どんな職業になることが出来るか教えてもらう。
親と相談し、なる職業を決めたら教会でお祈りすると、転職が出来る。
ステータスで自分がいじれる所は、LP、SPの割り振りだけである。
また、無職の状態からなることが出来る職業を下級職といい、下級職のレベルが20になるとまた転職出来るようになる。
下級職のレベルを20まで上げると同系統の中級職に転職することができ、中級職になれれば就職でかなり有利だからそこを目指そう。
そんな感じのことを司祭のジェイルさんが言っていた。
俺は自分でステータスを弄れるし、特に聞く必要がなかったので聞いてる振りだけしたけど。
「それでは、前から一列に順番に並んでくれ」
俺は列の真ん中ぐらいに並んだ。
アイリは俺の後ろに並んだ。
「魔物を倒したことはあるか?」
「ないです」
「そうか。ならば、この魔物を今から渡す剣で刺しなさい」
「ひっ」
「大丈夫だ、これは君を攻撃することはない」
司祭が魔物に怯える子供を励ましている。
説明だけじゃなく、メンタルケア的な役割も持っているのか。
そして、その横に居る豪華な服の人が鑑定士かな?
鑑定をしてみたいけど、鑑定は自分より基礎レベルが高いとちゃんと表示されないんだよな。
鑑定士ってことはレベルもかなり上げてるだろうし、多分鑑定してもなんの情報も得られなさそうだ。
子供たちが魔物を倒して、鑑定される。
その結果を見ることは出来ないが、耳で聞くことは出来るので、それっぽく調整するしかない。
「君は…カイン君か。見ない内に成長したようだ。魔物も倒しているだろうし、このまま鑑定でいいだろう」
ジェイルさんが鑑定士に合図を出すと、鑑定士の目が青色に光った。
なるほど、鑑定している時は目が光るのか。
あまり人前で鑑定しない方がいいみたいだ。
「この歳でレベル8!? かなり努力したようですね…」
よし、偽装はしっかり成功しているみたいで安心だ。
恐らく俺の鑑定結果は、レベル8、の他は初期値となっているはず。
「職業は普通の候補しかないみたいですが、次の鑑定式が楽しみですね」
職業の候補を書いた紙が後で親に渡され、早くて当日、遅くても1週間以内に転職しなければいけない。
俺は戦士の職業になると言っているので、さっさと祈りをして偽装の方も変えておこう。アイリの鑑定結果はどうなったかな。
「こ、これは!!! 」
突然鑑定士が大声を出した。
「鑑定士殿、どうされた?」
「この子、〈武の才能〉と〈剣の才能〉の称号持ちです!」
才能系の称号は、ほぼ全ての英雄が持っていて、将来が確約されるやべー称号だ。
それが2つあるなんて聞いたことないぞ。
「ま、まさか…初代様の再来なのか!?」
初代様という単語が聞こえた瞬間、教会内が一気にザワついた。
庶民の我々はなんのこっちゃ、って感じだけど、教会の関係者達が明らかに動揺している。
そして、騒ぎの中心であるアイリさんはというと。
「カイン、狩りに行くぞ!」
何も考えてなさそうな顔で、そう言ったのだった。
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