第三十六話 町田政権下の日本外交(1)

 日中戦争が無事終結し、ヒトラー率いるドイツの手によって第二次世界大戦が始まろうとしているが、このタイミングで町田内閣成立以後のに焦点を当ててみたい。


 まず、日本の隣国となったとは、建国以来友好的な関係が続いている。


 日本側からすれば、第二次朝鮮出兵の影響で荒廃した土地の復興やユダヤ資本をはじめとする各国からの投資などの経済的利益がある上、朝鮮自治政府時代とは比べ物にならないほどに安定した国家が存在していることは、本当にありがたいことだった。


 東イ側からしても、自分たちの領土であった旧朝鮮半島をユダヤ人国家の領土として譲渡するだけでなく、で自らの安全を保障し経済的支援も行ってくれた日本に、心の底から感謝していた。


 軍事面でも、国土防衛と対ソ戦を主目的とした陸海空戦力の整備が進みつつあり、東イ国大手の造船会社である東方・シップオーシャンでは、日本海軍の技術を導入する形で東方イスラエル海軍版防人型護衛駆逐艦が建造されるなど、日本の支援のもとで急速に技術力の発達が進んでいた。


 東方イスラエル国の北に建国されたは、関東軍が建国の立役者となったこともあり、東イと同様に友好的な関係が続いている。


 経済面では、など様々な点で協力関係にあり、イギリス資本を導入した日産コンツェルンや満州帝国政府より鉄道経営を委託された満州総合鉄道南満州鉄道から改名など多くの日本企業が満州帝国内で活躍している。


 軍事面では、を中核に密接な繋がりがあり、石原莞爾いしわらかんじ中将率いるの指導で満州帝国軍は急速に練度を向上させつつあった。


 また、日産コンツェルン傘下の満州航空機が日本の航空機のライセンス生産を開始していたり、大連船舶造船集団によって東方・シップオーシャンのように日本海軍の技術を導入した造船が始まりつつあり、日本海軍向けの主力艦の建造の為に拡張工事が行われる見通しも立ちつつあった。


 中華民国とは、町田内閣成立以来対立関係が続いており、租界での日本企業の経済活動などでの繋がりはあったものの、軍事・外交面の関係は断絶状態と言って良かった。結局、中華民国とは戦争状態に陥り、第二次下関条約の締結に伴い現在はとなっている。


 一方、中華連邦とは占領統治時の善政や建国時の協力、中華民国領の多くを中華連邦領にしたことなどの様々な要因で現在も友好的なムードが広がっている。


 経済面では、講和条約締結後から財閥を中心に多くの企業が進出を開始しており、日本政府の指導により現地零細・中小企業の買収によるが図られたりもしている。


 軍事面では、対中華民国戦に備えた軍事力強化の為に満州帝国と連携する形で多くの支援が行われており、満州帝国軍事顧問団を転用する形で軍事顧問団の派遣も現在検討されている。


 今までの話では触れられていなかった、他のアジアの国家との関係についても触れておきたい。


 とは、町田内閣が対中・対欧米を意識したアジア諸国の更なる連携強化を模索していた為、1936年にが締結されるなど友好関係が構築されつつある。


 経済面では、国内の経済成長を背景に海外進出を強化し始めた中小企業や新興財閥などがタイへの進出を行っていたり、一部関税の撤廃について議論が進んでいたりとつながりが強固なものになりつつある。


 また、軍事面でも両国軍の交流や合同演習の実施、陸軍装備や海軍艦艇の輸出など様々な点で協力が進みつつあり、安全保障条約の締結についても両国間で議論が行われている。


 インドネシア蘭領東インドやオーストラリア、インドなどの欧州諸国の植民地・自治領・保護国とは、朝鮮・満州・中華特需に伴う経済発展により、資源や機械などの貿易が増大するなど経済的には繋がりが強固になっているものの、欧州諸国との友好関係が続いている為、他の点では必要以上に関係が深化したりすることはなかった。


 ただ、将来的な欧州諸国との対立の事態に備え、各植民地のたちと密かに接触していたり、が創設されたり色々な動きも起きている。


 アジア諸国との連携を重視する町田内閣は、アジアの独立国とは友好的な関係を構築する一方、植民地や自治領とは貿易面を除いて表向きは必要以上に関係を強化したりはせず、将来を見据えた独立運動扇動の準備を密かに進めていた。

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