第二十一話 日中戦争(2)上海爆撃と宣戦布告
1937年8月14日、前日に上海市内での爆撃に成功した中国空軍は、海上に展開していた日本艦隊への爆撃を開始した。
当時、上海沖の黄浦江には中華救援艦隊到着までの支援部隊として、満州駐留艦隊麾下の第十戦隊及び第十一戦隊が展開していた。
この支援艦隊に対する空襲は、六機の中国機によって行われた。日本側の被害は奇跡的に皆無だったものの、上海周辺の制空権が中国空軍に掌握されているという事実は支援艦隊司令部及び上海特別海兵隊司令部に衝撃を与えた。
さらに、この日の空襲では誤爆が発生していた。午後四時ごろに第十戦隊所属の海防艦「
また、その数分後には上海競馬場に爆弾を投棄しようとした中国機は、誤って二発の爆弾を大世界娯楽センターに投下してしまった。しかも、当時この施設には上海事変の戦禍から逃れようとしていた避難民が集まっており、投下された爆弾の爆発によって二千人の死傷者を出す大惨事を引き起こしていた。
これら一連の誤爆で、プリンストン大学教授のロバート・カール・ライシャワーや南部パプテスト連盟に所属する宣教師のフランク・ジョセフ・ローリンソン、上海市参事会員のエリスンら欧米諸国の要人が多数犠牲となり、上海の戦禍は欧米諸国にも大きな影響を与えていた。
海上で行われた中国軍機の爆撃でも誤爆は発生し、黄浦江の呉淞付近に停泊していた英海軍の重巡洋艦「カンバーランド」及び米海軍アジア艦隊旗艦である重巡洋艦「オーガスタ」を二機の中国軍機は日本軍艦艇と誤認してしまった。
幸いなことにパイロットの操縦ミスで直撃は避けられたものの、一発が「カンバーランド」の至近で爆発し数名の死傷者を出してしまい、英国政府は同日に発生していた英国系企業の施設に対する誤爆と合わせて大々的に非難、中英関係は徐々に悪化し始めていた。
これらの誤爆について、
一方、国際連盟は日本側の全面協力のもと上海爆撃調査団を編成、この誤爆事件の発生原因の調査を行った。後に発表された調査結果によると、確実ではないものの現場に散乱していた爆弾の破片から日本製の爆弾では恐らくないと判明、国際連盟は調査結果の発表に伴い中華民国に対する経済制裁を正式に可決することとなるのだが、それは後の話である。
海兵隊や支援部隊の艦艇が空襲への対応に追われる中、翌15日午前10時30分、昭和天皇は中華民国及び中華ソビエト共和国に対する宣戦の詔書を発布、正式に大日本帝国による対中宣戦布告が行われた。
中華民国及び中華ソビエト共和国に対する宣戦の詔書は、15日に発刊された全ての夕刊の一面に掲載され、国民は日清戦争の大勝利と下関条約の栄光をもう一度と湧き立った。
日本の対中宣戦布告に続く形で、同日正午には満州王国執政の
また同じ頃には、中華救援艦隊が上海沖合に到着していた。上海租界にいる多くの人の期待を背負ったこの艦隊は、以下の艦艇によって編成されていた。
【中華救援艦隊】 司令長官
司令部直率:『戦艦』〈
《第四戦隊》:『重巡』〈
《第二水雷戦隊》:『軽巡』〈
…《第六駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第十駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第十二駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第十九駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第一航空戦隊》:『空母』〈
…《第三十駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第二航空戦隊》:『水上機母艦』〈
…《第二十四駆逐隊》:『駆逐艦』〈
《第三航空戦隊》:『水上機母艦』〈
統合参謀本部海戦参謀部は、中華救援艦隊の編成の際に防護巡洋艦が最大戦力である中国海軍は脅威ではないと判断、列強に匹敵する戦力を揃えていた中国空軍を今回の主敵と考えていた。
その為、近代化改装中の「
一方で、海軍の象徴でもある戦艦については、その多くが近代化改装中である為、
上海の多くの人々が艦隊来援に沸き立つ中、満中国境では満州王国軍の精鋭と在満日本軍機械化部隊で日満連合軍が編成され、山東半島の包囲と上海戦の援護の為に南下を開始した。
上海での武力衝突から2日が経過し、誤爆事件などで非難を浴びながらも中国軍が優勢を保つ中、日満両国の正式参戦と中華救援艦隊・第一海兵師団の到着が戦況に大きな影響を与え始めていた。
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