第3話 衝撃的

 加子に連行されて辿り着いた場所は、


「加子んじゃん」


「え、そうだけど。なにか問題でも?」


「何回聞いても場所教えてくれなかったじゃん」


「……」


 無視かよ。


 羽衣をフル無視している私が文句を言える立場じゃありませんが。


「なあ、お夏たちは?」


 アパートを目の前にして振り返ってみれば、成人組がいない。


「近所のスーパーに買出し」


「成程」


 視界の中心に捉えてしまった羽衣と梨美は見なかったことにする。


 肩をくっつけあっちゃって。


 もう夏だぞ。


 暑くねえのかよ。


 というか、それ以前に。


 梨美、アンタは羽衣のこと気味悪がってたじゃん。


 いつの間に仲直りしたんだよ。


 あれか。


 ライブで連帯感生まれちゃった感じか。


 アンタはボクの味方だと思ってたのに。


 待った。


 梨美だけじゃないな。


「なあ」


「なに」


 鞄を漁って家の鍵を探す加子に話かける。


 もう逃げないから腕離していいのに。


 片手じゃ探しにくいだろ。


 じゃない。


「ボク以外のメンバーってさ」


「おん」


 ガサゴソガサゴソ。


 ほら、全然見つかんねえじゃん。


「腕離していいよ……で、話し戻すけど。みんな羽衣と……なんていうか。仲直り? したの」


「うん」


「ほー」


 成程。


 みんな羽衣のスタンスを受け入れたのか。


「はあ!?」


「ちょっ、和っちうるさい。ご近所迷惑」


「それはごめん。でもさ、いつの間に」


 衝撃的な事実発覚。


 頭の中で地球に隕石がぶつかったイメージが一瞬にして描かれた。


「あっ、あったあった」


「やっと見つかったか。じゃないよ」


「あーえっとね、なんか自然に」


「自然に」


「そう、自然に」


 おったまげる、とはこのことか。


 ボク以外全員が敵になった気分です。


 誰も味方がいないってことだし。


 孤立無援。


 四面楚歌。


「だからさ」


 一歩踏み出した加子が振り返る。


「和っちもいい加減、仲直りしてね。至急」


 その顔は笑っていたけれど、やっぱり目は全く笑っていなかった。

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