第16話 いじめ撲滅

 第14話、15とリンク🔗

 

 1月7日深夜

 漆黒の空が窓の外にある。堂馬は知人の家のリビングのソファでほうじ茶を飲んだ。大昔にCOCOAって何の役にも立たないクソアプリがあったな。高校時代の友達がコロナに罹患し、亡くなった。ECMOとかいう医療機器を使ったがダメだった。

 心臓と肺が、生命を維持するのに十分な機能を失った際に、心臓と呼吸の補助をする治療法である。

 ECMOは患者の体内から血液を抜き出し(脱血)、人工肺にて二酸化炭素を拡散により除去するとともに、赤血球に酸素を付加(酸素化)し、再び体内に戻す(送血)ことを行う。これにより、肺が本来行うべき酸素化と二酸化炭素除去を代替し、肺を全く使用しなくてもよい状況(Lung Rest)を作り出す。

 窓からはライトアップされた銀閣寺が見える。

 銀閣寺は正式には慈照寺という。 1482年に、室町幕府8代将軍・足利義政の山荘として建てられた東山殿を、義政の死後に寺院に改めたものだ。 総門から中門にかけて続く、銀閣寺垣と呼ばれる高い垣根の道を通り抜けると、銀閣寺の象徴ともいえる国宝の観音殿がすぐそこに。

 振り子時計が11回鳴った。知人は胃薬を買いに出かけている。

 屏風ヶ浦は紅子の名を語り作家活動していた。

 堂馬は喉を押さえ、苦悶の表情を浮かべた。

 クソッ!あの野郎!

 まぁ、いいか、これでやっと潤に会える。


 堂上梅軒どうがみばいけんは京都府応仁区役所いじめ撲滅課の職員だ。いじめ被害者の戦士化の合否を判断するのが梅軒の職務だ。戦士化ってのは梅軒が勝手に呼んでいる。梅軒も子供の頃に、いや大人になってからも度重なるいじめに遭った。梅軒の父親は宍戸梅軒ししどばいけんの大ファンだ。宍戸梅軒は、剣豪・宮本武蔵の伝記『二天記』に登場する伊賀国の鎖鎌の使い手「宍戸某」なる人物を元に、吉川英治が小説『宮本武蔵』において脚色・創作した登場人物である。


 小説では「宍戸八重垣流」という流派を自ら編み出した鎖鎌の達人で、慶長10年(1605年)に宮本武蔵と決闘を演じた。


『宮本武蔵』の登場人物の中でもとりわけ個性的な魅力に富み、人気が高い。「鎖鎌」という個性的な武具を操る。武蔵との決闘場面は、作品前半を彩る鮮烈なエピソードのひとつであり、映画化作品等においてもまず欠かせない見せ所となっている。宍戸梅軒はいわゆる求道的「武芸者」としては描かれておらず、野武士集団の頭目であり、武芸というよりは殺傷術の一つとして自らの鎖鎌の技を鍛錬している。いまだ道としての「剣」に目覚めていない、荒くれ者の痕跡を残した小説前半の新免武蔵にとって、いわば「自らに近しい何者か」として現れる敵であり、その成長過程において乗り越えられるべき壁として描かれた、と言って良いだろう。


 モデルとなった宍戸某は、『二天記』における記載のほかに実在を示す証拠はない。また『二天記』は史料性に乏しく、この記載自体も武蔵の死後に付け加えられたものだと一般に考証されている。


「宍戸梅軒」の名前については、福島県で活動した実在の俳人である宍戸梅軒から取ったと考えられる。大正の初め、本格的に作家活動を開始する以前の吉川と、この宍戸梅軒が山梨県の旅先で知り合い、意気投合して深夜まで語り合ったという逸話が伝わっている。


 緑川将之みどりかわまさゆきに殺人許可をしたのは梅軒だ。

 緑川は特別支援学校『応仁学園』に通っている。緑川は2年1組(聴覚障害部門)だ。

 特別支援学校では、教科科目や専門科目を学習する。 全日制では3年間、定時制・通信制では4年間以上かけて学ぶ場合もある。 卒業までに必要な単位数を各校で定めており(最低単位数は 74 単位)、これを修得することにより高等学校卒業資格を得ることができる。

特別支援学校の対象となる障害は、前述のとおり5つで、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)だ。 学校教育法施行令第二十二条の三に明示されている障害の程度においても、発達障害といった文言は含まれていない。


 クラスでは、4時間目は自習の時間となっていた。この自習時間中である午後0時5分頃に、緑川と被害者になる吉良桃彦きらももひことの喧嘩が発生する。桃彦は緑川が勉強の出来ないのを詰ってきた。『芥川龍之介の龍の字も書けへんのか? こっちの竜やないやろ? 頭がおかしいのはこれやから……』この喧嘩の時に緑川は折りたたみナイフを取り出して桃彦を刺した。これを止めに入った1人の生徒も刺した。これを見つけて止めに入った教諭を切り、計3人の被害者を出した。京都府警捜査一課の糀屋黄助こうじやきすけはこの加害生徒を現行犯逮捕した。

 糀屋は十字刈りっておかしなヘアスタイルをしていた。真上から見ると✚になっているのだ。

 糀屋は御上に反旗を翻した。こんな世の中じゃ、救われる人まで救われなくなってしまう。


 応仁学園では事件が発生した1月17日の午後8時より、1年生の保護者を対象とした緊急の保護者会を開き、把握している事実関係や今後の対応を述べる。翌日以降は登校日にして生徒の気持ちへの対応をする。予定されていた進級相談会の日程を1週間延期する。1月22日に予定されていた学校見学会は中止となる。

 

 1月22日午前9時応仁警察署の外は酷い吹雪だ。

 緑川を迎えに梅軒はやって来た。緑川は留置所にいた。

「無罪放免だ」

 緑川は朗らかな表情で、梅軒に「助けていただいてありがとうございます」と頭を下げた。

 

 糀屋はムショに入るのが怖くて、どこかへいなくなってしまった。

 

 同日の午後2時、『新鮮だろ?』ってワイドショーを見ていた留守は弟が殺された日のことを思い出し、涙を溢した。弟を殺したのは紅子だ。あの女はとんでもない悪魔だ。

 

 樹は那智を倒す組織を立ち上げることにした。1月23日、自宅から最寄りの神経クリニックで認知症テストを行ったら軽度の認知症と診断された。悪化する前に那智を倒さなければ。卜部や英樹、そしてやはり生きていた紅子が組織に加わった。

 卜部がインターネットで那智が京都で講演会を行うことを24日の夜、O駅近くのネット喫茶で突き止めた。樹は銃の製造を自室で行った。2013年、テキサス州の非営利団体「ディフェンス・ディストリビューテッド」が3Dプリンターを使用して拳銃を製作するための設計図をインターネットで公開した。この銃は「リベレーター」と名づけられ、設計図をダウンロードすることで3Dプリンターによりプラスチック製の拳銃を作ることが可能である。これにより対面販売と異なり誰でも身元調査なしに銃器を手に入れることが可能で、凶悪犯、テロリスト、精神的に重い病を抱えた人、子どもなども銃を入手できるようになった。また、作成された銃はプラスチック製であるため金属探知機に感知されず、安全保障面での問題も指摘されている。設計データはのちに削除されたが、YouTubeなどでそういった銃の設計についての画像が公開されている。🔫

 

「どうして、死んだふりなんてしたんだい?」

 25日の午前7時頃、整形して若い頃の美貌を保ったままの紅子に寝室で尋ねた。

 英樹は最寄りのトレーニングセンターに銃や格闘技を習いに出かけた。卜部はきっと自分の家だ。彼は戦隊ヒーロー物好きで、去年からヒーロー物が7時枠に(しかも1週間ぶっ通し)になったのでそれを見ているはずだ。

 紅子は屹立した樹のモノをトランクス越しに撫でていた。

「ある人間にずっと脅されていたの」

 紅子は22日、買い物している樹の背後に立っていた。自宅の最寄りにあるスーパーの試食品コーナーでウィンナーを食べているときだった。試食品コーナーが復活したのは2030年頃だった。コロナは完全に消滅し、それどころか癌や風邪を事前に知るまでに医療は進歩した。

『樹だよね?』と、彼女は微笑んでいた。

『べっ、紅子なのか?』

 彼女は涙を溢した。

『腹減った』と言いながら泣いてるので、樹は苦笑した。

 樹は彼女の気持ちを察して白骨や犯人の事は問い質さなかった。

 イートインスペースで蒸しパンや鰹の刺身、串カツなどとんでもないメニューを食べながら話した。

 彼女は結婚していなかった。さらに、南禅寺近くの大学で講師をしていた。

 何故かしら彼女とアイスランドに行きたい気分になった。あの国はヨーロッパ屈指の温泉大国だ。

 彼女は愛する教え子が幼少期にイジメをしていたので那智に反感を持っていた。

『柊一は『北斗の拳』マニアでマナーの悪い奴がいると、ケンシロウの真似をして殴ったりしてたらしいの」

 紅子は平安大学の『マンガ学部』って変わった学部に所属しており、『金田一少年の事件簿』ゼミの先生だった。

 大学3年の杉野柊一すぎのしゅういちは研究室で何者かによって鈍器で撲殺されたのだ。

 詳しい話はまた後にする。

「いったい、誰に脅されていたんだ?」

「屏風ヶ浦って後輩の講師、彼はベストセラー作家を目指すために私のUSBメモリを盗んだ。無用心にも勤務先のD大の研究室の机の上に置きっぱなしにした。それを屏風ヶ浦は盗み出した。すぐに彼が犯人だと気づいた」

 樹のモノは萎えてしまった。

「もういい。ツラいだろうからそこから先は……」

 

 大石崇高おおいしむねたかは花見小路にある喫茶店にやって来た。大石はギャングのボスとして権威を誇っていた。大石にイジメられて自殺した者もある。那智が考案した法律に大石はビビっていた。『必殺仕事人』みたいな奴がどこかで命を狙っているかも知れない。

 大石は原淳史はらあつし片岡健かたおかけんって手下を従えている。3人は花見小路高校に通っている。

 花見小路校のライバル校である化野あだしの高校には、高岡たかおか岩室いわむろ浅岡あさおかってヤバい奴らがいる。

 化野は、京都の嵯峨の奥にある小倉山の麓の野。京都市右京区嵯峨鳥居本化野町にその地名が残っているが、古くは山城国葛野郡嵯峨といい,かつては風葬の地,近世は鳥辺山とともに火葬場として知られた。「西の化野」、「東の鳥辺野」、「北の蓮台野」を京の三大葬地という。 化野の名は「無常の野」の意で、人の世のはかなさの象徴としても用いられた。その霊を弔う寺として、化野念仏寺があり、境内には約8,000の無縁仏を祀る石仏がある。

 転じて、火葬場、墓場の意味とも解釈される。


 1月26日の放課後、高岡たちが花見小路校に乗り込んできて、吹雪の中、校庭で殴り合いになった。

 大石チームの圧勝だった。


 1月27日、大石は片岡をビビっていた。大石は高3で、もう少しで卒業だ。片岡は高2だが、強引に仲間にした。膝を蹴ったり、髪の毛掴んだり、そりゃあもう酷い有様だった。『ワイ、京都で1番になりたいんやで!」と叫びながら、鳩尾を殴ろうとしたので『分かった仲間になる!』と、片岡は泣き叫んだ。片岡に復讐されるんじゃ?そう思うと眠れなかった。

 

 堂上にいつものようにパシられた。子供の頃から堂馬は堂上のいいなりだった。給食のときに堂馬は堂上から嫌いなヒジキを無理やり食べさせられた。確か、あのとき嘉門達夫の『たらり〜、鼻から牛乳〜』がスピーカーから流れ、堂上は笑い過ぎて揚げパンを喉に詰まらせて苦しそうにしていた。このまま窒息死してくれないかな?と、思ったりした。

 突然、堂馬は家にやって来て『俺を匿ってほしい』と上がり框で土下座をしながら頼み込んだ。

 彼は屏風ヶ浦って問題教師を殺してしまったらしい。最初は『おまえだけが頼りだ』と丁重だったが、断ろうとしたら隠し持ってた銃を突きつけ、「おまえに頼んだ俺が間違いだったわ」と低い声で言った。

 彼を殺さないと逃亡幇助の罪に問われてしまう。

 茶っぱにニコチンを入れて堂上を葬ったのだ。


 緑川と堂上はメインディッシュの大石を探していた。この世からいじめを失くすために2人は必死だった。卜部って名探偵を使って大石が三条河原のテントの中に隠れているのを突き止めた。

 緑川は日本刀で大石の首を跳ねた。

 2人は鴨川にて入水自殺を図った。

 

 

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