第7話 天地学園事件

 2015年6月1日

 日本年金機構、外部からの不正アクセスによって年金の受給者と加入者の個人情報約125万件が外部に流出したことを発表。職員が、パソコンに届いたウイルス入りの電子メールのファイルを開いたことが原因とされている。

 

 舞台は埼玉にある天地てんち学園。ここでは留置所や除草剤など、特異な要素が学園内に存在する。主人公は1年生のつばさで、彼は学園内で起こる奇妙な事件に巻き込まれた。翼は刑務官になる夢があった。

 刑務官は国家公務員であり、17歳以上29歳未満の人であれば誰でも採用試験を受けられる。 試験は高校卒業程度の難易度なので、特に大学や専門学校へ進学しなくても合格できる可能性はある。

 翼は19歳、さいたま市にある高校を卒業後、天地学園に入った。


 ある日、彼は教室で起爆装置を見つけた。起爆装置の存在には謎めいた秘密が隠されていることを感じ取った翼は、1年C組の担任で地理マニアの樹と共に事件を解明するため動き出した。


 翼と樹は学園内の地理的な謎を解くため、留置所に閉じ込められた過去の学生たちの記録や除草剤の秘密を探った。調べるうちに、監禁された学生たちの親は全員が富豪だった。監禁されていた人間の中には樹の従兄弟である大江竜太おおえりゅうたも含まれていた。

 資金繰りに困った学園長の牧幸雄まきゆきおによって監禁されていたことが明らかになった。大江たちは牧の手足となって働いていた安達剛造あだちごうぞうによって監禁されていた。三宅健みやけけんに似た事務員の小笠原おがさわらが安達の履歴書を見せてくれた。

 どことなく向井理むかいおさむに似ている。

 1982年6月1日、栃木県宇都宮市で生まれている。

「33歳か、よくよく考えたら今日が誕生日なんだな」

「そういえばそうですね〜」

 樹は『銀狼怪奇ファイル』で三宅が演じた金狼を思い出した。最後に壮絶な死を遂げる。

 小笠原の案内で地下にやって来た。

「ここでは模擬授業が行われます。生徒が囚人を体感することによって、その人たちの気持ちになれるのです」

 竜太は樹に助け出されると大泣きした。

 留置されていたのは全部で6人。

 牧も安達も姿を晦ましていた。

 彼らは地理の知識を駆使して隠れた地域に辿り着き、起爆装置の謎解きに一歩近づいた。


 翼と樹の調査は学園内の異常な現象に気付くことで加速した。彼らは樹の知識と翼の優れた洞察力を駆使し、起爆装置の秘密と学園の地理的謎を解明していった。


 翼と樹は協力しながら解決に向けて進んでいく中で、学園の地理的配置や起爆装置の謎が解き明かされていった。


 6月4日

 午前4時34分ごろ、北海道の釧路地方中南部を震源とする地震があり、釧路市で震度5弱の揺れを観測したほか、北海道内で震度3〜1を観測した。気象庁によると、震源の深さはごく浅く、地震の規模(マグニチュード)は5.0と推定される。


 衆議院で公職選挙法の改正案が可決。参議院に送付。投票権の年齢を18歳以上に改定、2016年参議院議員通常選挙からの適用を予定している。


 放課後の教室。賑やかだった学生たちの姿が消え、ひっそりとした雰囲気が漂う。壁にかかる黒板には、まだ残っている数学の問題や英単語が書かれている。


 教室の窓から差し込む夕日の光が、教室内を優しく照らす。カーテンの隙間から覗く外の景色は、少しずつ暗くなっていく夕暮れの風景。


 机の上には教科書やノート、鉛筆や消しゴムが無造作に置かれている。まだ終わっていない宿題に取り組むため、翼が机に向かっている。


 教室の奥には黙々と掃除をする生徒がいる。掃除機の音や拭き掃除の音が響き渡り、ひときわ静かな空間が広がっている。

 時折、遠くの廊下で友達同士が話し声を上げる。楽しそうな声が響くが、教室にはその余韻だけが届く。少し寂しげな笑顔で机に向かう生徒の表情にも、その寂しさが見え隠れする。


 時には音楽室から美しい旋律が聞こえてくる。一人でピアノに向かい、音符を奏でる生徒の姿がある。その音色が教室全体に広がり、穏やかな雰囲気が漂う。


 放課後の教室は、学生たちの日々の様々な思い出が刻まれた場所である。毎日の授業やクラブ活動、友情や努力の場でもあった。


 教室の風景は、まるで静かに心を休めるような時間が流れているように感じられる。放課後の教室は、学生たちが一日の疲れを癒し、また新たな明日への希望を抱いていく場所なのだ。

 

「起爆装置って言ったっていろいろあるんですよ」

 放課後の教室、回転椅子でグルグル遊びながら翼が言った。

「そうなのか?」

 樹はミニテストの採点に勤しんでいた。

 翼は黒板に白いチョークでカッカッと音を立てながら書いていった。


 化学的装置

 導火線などの燃焼による反応で起爆する。

導火線式雷管(工業雷管)がこれに当たる。


 原始的な方法としては二種類の薬品が混合することで起爆する方法もある。

 バイナリー式などと呼ばれ、工業的には使用されていないが、テロリストが使用することがある。

 

 機械的装置

 手榴弾、砲弾、魚雷などで使用されている。ハンマーや激発ピンが起爆薬を叩くことで起爆する。


 電気起爆装置(IED)

 瞬間的に起爆するタイプ。電気雷管がこれに当たる。

 

 短遅延起爆装置(SPD)

 数ミリ秒程度の遅延動作をするタイプ

 

 長期遅延起爆装置(LPD)

 数秒から長い物で数時間の遅延動作をするタイプ


 起爆電橋線型雷管

 ナノ秒レベルの精度を要求する核兵器の爆縮レンズなどで使用されている。

 放電によって細いワイヤーを蒸発させることで起爆する。


 レーザー信管

 光ファイバーを通して爆薬にレーザーパルスを送ることで起爆する。

 

「随分詳しいな?」

「図書館で調べたんです」

「そうだったのか……翼は何で刑務官になろうと思ったんだ?」

 樹は思い切って翼に尋ねた。

「本当は刑事になろうとしてたんです、けど試験に落ちちゃって……」


 夜8時過ぎ、樹は恋人の紅子と大宮にあるラブホにいた。ドアを閉めると、外の喧騒から切り離された静寂な空間が広がる。壁には落ち着いた色合いの壁紙が施され、柔らかな照明が部屋全体を包み込んでいる。


 ベッドは広々としており、その上にはシーツや枕が心地よく整えられている。赤や紫色の装飾で彩られた空間は、ロマンチックな雰囲気を醸し出している。


 部屋の隅には心地よい香りのアロマディフューザーが置かれており、ほのかな香りが漂ってくる。また、小さなスピーカーからは穏やかな音楽が流れ、心を落ち着かせる。


 ベッドサイドには、照明のスイッチやテレビのリモコン、ドリンクのミニバーが用意されている。ミニバーにはさまざまなドリンクやスナックが揃っており、くつろぎながら楽しむことができる。


 室内には、ソファやテーブル、ミラーなどの家具も配置されている。ソファはふかふかと気持ちのいい座り心地で、テーブルには花やロウソクが飾られ、より一層のロマンティックな雰囲気を演出している。


 樹と紅子の愛情は深まった。

 2人は大学時代、教職課程を専攻していた。そのときは紅子に新美にいみっていう彼がいて、樹はアタックしたものの断られた。

 樹はそれから何人かとつきあったが、どれも長くは続かなかった。そして、2年前に大宮で偶然会った。北銀座通りって繁華街を歩いていたら、鼻が痒くなってポケットティッシュがほしくなった。ジムのティッシュ配りをしている人がいたので、近づいたら紅子だったのだ。

「あれ、こんなところで何してるの?」

「豊後さんこそ……」

「2種免許しか持ってないから非常勤講師してるんだけど、生活がキツくてバイトしてんだ」

「豊後さんって教科は何だったっけ?」

「国語」

「僕、芥川龍之介あくたがわりゅうのすけが好きなんだ」

「奇遇ね、私も〜」

 芥川 龍之介は(1892年〈明治25年〉3月1日 - 1927年〈昭和2年〉7月24日)は、日本の小説家。号は澄江堂主人ちょうこうどうしゅじん、俳号は我鬼(がき)。東京出身。『鼻』、『羅生門』、『地獄変』、『歯車』などで知られる。

 僕は特に『地獄変』が好きだ。

 

 時は平安時代。絵仏師の良秀は高名な天下一の腕前として都で評判だったが、その一方で猿のように醜怪な容貌を持ち、恥知らずで高慢な性格であった。そのうえ似顔絵を描かれると魂を抜かれる、彼の手による美女の絵が恨み言をこぼすなどと、怪しい噂にもこと欠かなかった。この良秀には娘がいた。親に似もつかないかわいらしい容貌とやさしい性格の持ち主で、当時権勢を誇っていた堀川の大殿に見初められ、女御として屋敷に上がった。娘を溺愛していた良秀はこれに不満で、事あるごとに娘を返すよう大殿に言上していたため、彼の才能を買っていた大殿の心象を悪くしていく。一方、良秀の娘も、大殿の心を受け入れない。


 そんなある時、良秀は大殿から「地獄変」(地獄を描いた図のこと。「地獄変相図」の略。)の屏風絵を描くよう命じられる。話を受け入れた良秀だが、「実際に見たものしか描けない」と頭を抱える。彼は、地獄絵図を描くため、ある時は弟子を鎖で縛り上げ、またある時はミミズクに襲わせるなど、狂人さながらの行動をとる。こうして絵は8割がた出来上がったが、どうしても仕上がらない。燃え上がる牛車の中で焼け死ぬ女房の姿を描き加えたいが、どうしても描けない。つまり、実際に車の中で女が焼け死ぬ光景を見たい、と大殿に訴える。話を聞いた大殿は、その申し出を異様な笑みを浮かべつつ受け入れる。


 数日後、良秀は大殿に都から離れた荒れ屋敷に呼び出される。恐ろしいことに、火にかけられる牛車には良秀の娘が乗せられていた。間もなく牛車に火がかけられ、燃え盛る炎の中に縛り上げられた娘は身悶えしながら、まとった豪華な衣装とともに焼け焦がれて行く。その姿を良秀は、驚きや悲しみを超越した、厳かな表情でただ眺めていた。娘の火刑を命じた殿すら、その恐ろしさ、絵師良秀の執念に圧倒され、青ざめるばかりであった。やがて良秀は見事な地獄変の屏風を描き終える。日頃彼を悪く言う者たちも、絵のできばえには舌を巻くばかりだった。屏風を献上した翌日、良秀は部屋で自殺する。


 樹は紅子とつきあうことになった。互いに貧乏で、紅子はケータイさえ持っていなかった。実家住まいらしくて、デートのときは彼女の家に電話した。彼女の母親が出たときはドキドキした。

 彼女は一念発起して今は埼玉県内にある高校で働いている。


 紅子はふにゃふにゃの樹のものをしゃぶってくれた。唾液のピチャピチャという音に樹はイキそうになった。樹は紅子をベッドへと押し倒した。

 紅子は今日、白いブラウスに黒のミニスカートにパンプスだった。

 樹は紅子のブラウスのボタンをゆっくりと外していった。

 すると、紅子の少し大きな乳房が見えてきた。

 それを見ると樹は興奮を隠しきれないでいた。

ブラウスのボタンを全部外しブラウスの前をはだけさせた。

 黒い紅子のブラが見えてきた。

 そのブラの肩紐を片方だけ外す。

 この夜は激しく交わったが樹がイクことはなかった。紅子はビショビショに濡れていた。

「残念だわ」

「君のテクがないとかじゃないんだ」


 翌朝、天地学園の食堂で爆発事件が起きた。

 この事件で3人の従業員が亡くなり、軽症だった比企明美ひきあけみって食堂のオバちゃんが「そういえば、下水が臭かった。育江ちゃんがタバコを吸うんで火を点けた瞬間、爆発したの」と病室で埼玉県警の卜部刑事の質問に対し答えた。

「メタンガスにタバコの火が引火して爆発した。つまり、これは事故ってことだ」

 卜部はそう断定した。

 軽症だった比企が3日後、容態が急変して亡くなった。


 除草剤や起爆装置を準備した人間を見つけたのは樹でも翼でもなかった。宇喜多英子という数学講師だった。除草剤の主成分はグリホサートイソプロピルアミン塩(アミノ酸系)……液体除草剤の一般的な成分。 根まで枯らす。 グルホシネート(アミノ酸系)……根は枯らさず、葉、茎を枯らす。◎ペラルゴン酸……食品成分から作られた、かけてすぐに効き始める超速効性の成分だ。


英子は職員室のある人の抽斗を調べたら『4000mL/25=160mL』と黒いボールペンで書かれた紙を見つけたらしい。

「おそらく、その人はグリホサートの25倍の稀釈液を作りたくて、この式を書いたのでしょう。水4リットルに対してグリホサートは160ミリリットルにしないといけない。また、除草剤に含まれる塩素酸ナトリウムは爆発物の原料となり得る」

「犯人は毒殺と爆破を企画していたってことか?」

「そういうことになるわね」

「で、真犯人は誰なんだ?」

「安達剛造よ。伊香保温泉の宿に隠れていたのを警察官に見つかったみたいよ。本人は牧理事長を殺すことを考えていたらしい。奴隷でいることに嫌気が差したらしいよ。あと、囚人たちを爆殺することも考えていたらしいよ。警察に見つかったら教師生命終わりだもんね……」

「勝手な話だよ!」

 樹は怒りに震えた。

 

 牧理事長は成田空港で捜査員に確保された。バリ島に高跳びしようとしていたらしい。これにて一件落着!

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