第5話 ウサギの怪物
1997年、5月。舞台は
辻井は友人の樹と共にウサギの怪物がいる教室に足を踏み入れた。そこで彼らは怪物との対面を果たすが、怪物は彼らを脅かし、学園内に様々な不可解な現象が起こる原因になっていることに気付く。彼らは学園内で起こる連続事件の背後にウサギの怪物がいると確信し、真相を解明しようと奮闘する。
彼らの推理と行動によって、ウサギの怪物は学園内での事件の真相と関連していることが明らかになる。
養護教諭の
5月10日
月兎学園の2年2組のクラスでは、4時間目は自習の時間となっていた。この自習時間中である午後0時5分頃に、加害者、
学園では事件が発生した5月10日の午後8時より、高校2年生の保護者を対象とした緊急の保護者会を開き、把握している事実関係や今後の対応を述べる。翌日以降は登校日にして生徒の気持ちへの対応をする。予定されていた中間試験の日程を1週間延期する。5月11日に予定されていた学校見学会は中止となる。
5月12日 - トヨタ自動車が「ラウム」を発売。
樹と
「可愛いけど、糞が大変よね?」と、ともさかりえに似た愛梨が言った。
愛梨は、樹や辻井と同じ1年3組の生徒だ。部活は樹も愛梨も剣道部だ。長江は剣道部の先輩で、樹はいつもシゴカれていた。
「あんな奴、刺されて当然だろ?」
樹は長江の不幸を鼻で笑った。
「そういうのよくないよ」
愛梨に窘められた。
湯谷は揚げパンが大好きだ。
「長江君たち大したことなくて良かったな?」と、湯谷。長江、美香、千郷は皆、月兎病院に搬送されたが命に別条はない。
「そうですよね~」
子安は牛乳瓶に口をつけた。
スピーカーからはMr.Childrenの『innocent world』が流れている。
4月にMr.Childrenが活動休止した。子安はミスチルの大ファンだ。
5月14日 - アイヌ新法が公布。
月兎病院は、町で最も評判の高い病院の1つだ。しかし、この日の夜に病院内で恐ろしい殺人事件が発生した。3人の患者が次々と殺害され、病院は混乱と恐怖に包まれた。
殺されたのは長江、美香、千郷だ。長江と美香は腹を鋭利な刃物で刺され、千郷は首を切られていた。生首がゴロリってわけじゃなかったが、病室は血の海だった。長江は2階の201号室、個室だ。美香は204号室、千郷は205号室。こちらは大部屋だが、偶然にも美香と千郷しか入院していなかった。
真犯人からしたらメチャクチャ、ラッキーだ。見舞客や医療関係者がいなければ、殺し放題だからだ。
京子は、この事件の背後に隠された真実を解明するために挑んだ。彼女は病院内の証言や監視カメラ映像を分析し、被害者たちとの関係や事件の手がかりを探った。
京子は次第に、月兎病院には闇が存在していることに気づいた。医師や看護師たちの不正行為、患者たちの奇妙な治療方法、そして病院内での陰謀と険しい派閥の争いなど、病院内には秘密が渦巻いていた。
事件解決に向けて、京子は病院の闇を暴くためにあらゆる手がかりを追求した。推理と洞察力を駆使して、事件の犯人や動機を特定し、真実を明らかにしていく。
5月18日 - カンヌ国際映画祭で今村昌平監督の日本映画『うなぎ』がパルムドール(最優秀作品賞)を受賞。
樹は6月に行われる中間テストに向けて猛勉強していた。方程式がメチャクチャ難しい。このあと、平面図形や空間図形、比例、反比例などと戦わないといけない。
せっかく助かった長江たちが殺されてしまい、ビックリしていた。美香はどことなく
樹は一瞬、酒泉を疑った。留置所から脱獄し、長江たちを殺したんじゃないかと思ったが、昨日のニュースで酒泉は留置所から出ていないとやっていた。
『総理と呼ばないで』って田村正和主演の三谷ドラマをビデオ録画したのに、録画失敗していた。テレビデオを最近、親父に買ってもらった。
辻井などは学校内に犯人がいるんじゃ?と、ビクビクしていた。
5月20日
学校に登校した辻井は、2時間目の国語の授業が終わると保健室に行った。朝から気分が悪かったためとしたが、養護教諭の寺島敏子が体温を測定しても異常がなかったため、教室に戻るように促した。
3時間目は、彼が嫌いな英語の授業だった。教室に戻る途中にトイレに寄って友人と雑談していたた。偶然にも近くを通った子安教頭におよそ10分ほど注意された。「全く駄目じゃないか、おまえみたいな奴がいるからウチの学校のレベルが落ちるんだ」
教室に戻り、その後ノートを開いたと思うと、芯を出さないままシャープペンシルで『死ね死ね死ね』と滅茶苦茶にノートに書き、ノートを破り捨てた。さらに席が近い友人の樹に漫画の話をしていたため、教諭に再び注意を受けた。辻井は教師を眼光鋭く睨み付けたが無視された。プライドを傷つけられたと解釈した辻井は、授業が終わる寸前「ぶっ殺してやる!」と口走った。樹は「やめろ、殺すな」と制止した。
授業終了後、辻井は職員室に向かいバタフライナイフを右ポケットから取り出し、子安教頭の左首筋に当てた。これに対し子安は「おまえ、なにやってるんだ!」とひるむことなく発した。
直後、辻井が「ざけんじゃねえ!」と叫ぶと辻井は子安の腹部にナイフを突き刺した。
「ギャーッ」と子安の悲鳴が廊下に響いたが、さらに胸、背中と少なくとも7ヶ所を刺された。なおも辻井は倒れこんだ子安の身体を内臓が破裂するほど蹴り続けたが、これに驚いた樹の通報で寺島敏子に取り押さえられ、通報で駆けつけた萱島京子に補導された。
子安は直ちに病院に搬送されたが、すでに心肺停止状態で、1時間後に出血多量による死亡が確認された。胸に刺された一突きが致命傷だったと思われる。凶器のバタフライナイフは、子安が2週間前に札幌市で買ったものだった。
5月27日
セガとバンダイが同年10月1日に予定していた合併の合意を解消したことを発表。
神戸市須磨区の中学校の校門に切断された男児の頭部が置かれているのが発見される。
勤務を終え、寺島敏子は学園近くの畦道を歩いていた。
ツキノワグマの影が急速に敏子に近づいてくる。目が眩むほどの速さで、その巨大な体が敏子に迫ってくる。敏子の心臓は激しく鼓動し、一瞬にして全身が緊張に包まれる。
恐怖の波が敏子を襲う。まるで息ができないかのような圧迫感が胸に迫り、身体が凍りつくような感覚が走る。ツキノワグマの咆哮が荒々しく響き渡り、その声が私の耳に強烈に刺さる。
緊急に逃げ出すことを思いついて、敏子は足取りを速めて身体を動かそうと試みる。しかし、脚は思うように動かず、地面が激しく揺れているような錯覚に陥る。まるで足が重たく、地面に根付いてしまったように感じられる。
ツキノワグマの一撃が敏子に飛んでくる。巨大な爪が敏子の体に引っかかる衝撃が走り、激痛が全身に広がる。地面に倒れ込んだ敏子は、次なる攻撃を避けることもできず、絶望感が心を満たす。
周りの景色がまるでスローモーションのように見え、時間がゆっくりと流れていく。意識が薄れていく中で、最後の力を振り絞って生き延びる術を見出そうと必死に考えた。
樹は月兎駅近くの塾で勉強していた。
ツキノワグマは月兎動物園から脱走したのだった。そういえば随分前に
翌朝、校長が心労で心筋梗塞で亡くなったことを全体朝礼で樹は知った。
さらに、ニュースで辻井が長江、美香、千郷の3人を殺したことを知って衝撃を受けた。辻井は警察の取り調べに対し、『7人殺せば幸せなことが起きる』と話していたらしい。
「あんなに優しかった彼がどうして……」
樹は呆然とするしかなかった。
それから5年後、愛梨は子宮頸がんで亡くなってしまった。
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