第4話 文章力編1 ~文章力の根幹はパラグラフ・ライティング~
※元4話、5話の視点の話は酷い勘違いを基にしていたので削除しました。でたらめを教える訳にはいかない。
とても重要な話なのででたらめを語る訳にはいかないと前半は凄く真面目に語っていますが……後半はいつも通りです。持ちませんでした。
あと急に仕事が入ったため11時投稿を前倒しています。推敲しきれませんでした。
※この話はPVが激減してどうせ誰にも読まれないと言う絶望の中書いたので相当例文が吹っ切れてます。今より内省的な愚痴も相当入っていたのですが見苦しいので今は削除しています。ちょっと違和感がある文章なのはそのためです。
パラグラフ・ライティングは、日本ではなぜか教育課程で学ぶことがないのですが、アメリカでは論文の書き方として必修とされている文章技法――というか文章形式です。この形式を踏襲せずに論文を書くと大幅減点を喰らうくらいには必修です。それだけに有用性は折り紙付きと言えます。タイトルの通り僕が文章力の根幹とさえ思っている技法です。
パラグラフ・ライティングを実践すると文章に纏まりが生まれ、そして何より要旨の把握が容易になります。曖昧模糊で自由度が高すぎる文章という難物は自由度が高く不定形すぎるからこそ、強固な型に押込めて自由度を奪い形を与えねば400字詰の原稿用紙さえ書くことが困難です。その型として、最も優れているのが現時点ではパラグラフ・ライティングではないかと思っています。
今回はそんなパラグラフ・ライティングについて語っていきます。そこまで難しい話ではありません。あまり堅苦しくならないように気を付けていきたいです。
パラグラフ・ライティングは文字通りパラグラフを用いた文章執筆のことです。耳馴染みのない言葉だと思うのでパラグラフ関連の専門用語について最初に簡単に解説を。
パラグラフとはトピックセンテンスとサポートセンテンスで構成された文章の纏まりのことです。1パラグラフに1トピックのみ取り扱うというルールがあります。メタ的に言えばこの空行で区切ってある文章の纏まりのことです。通常、冒頭にトピックセンテンスを置き、そのトピックセンテンスを補足するサポートセンテンスを空行、あるいは改行まで連ねると言う形式で書きます。
トピックセンテンスはパラグラフの冒頭に置く一行要約文です。各パラグラフのトピックセンテンスだけを繋げて読むとそれだけで文章として成立するのが特徴です。そのパラグラフで言いたいこと(トピック)が一行で分かるように纏めてあるからです。要するになろうの長文タイトルみたいなものです。内容を長文で語るのです。
サポートセンテンスはトピックセンテンスを説明・補強する補足文章です。トピックセンテンスだけでも言いたいことは通じるのになぜサポートセンテンスが必要なのかと言えばトピックセンテンスだけでは情報不足だからです。
例えば「おい新入り、これやっとけ」と説明もなく言われたら、新入りにこの作業をやらせたいというトピックだけは伝わるものの、なぜやる必要があるのか、どうやったらいいのかなどの、補足情報が全く足りないため、上司をぶん殴りたくなります。「俺の妻は美人だ」とただそれだけ言われたら、主観的に美人なのか客観的に美人なのか、現代的に美人なのか平安的に美人なのか、あるいはタイ式の美人なのかインド式の美人なのか、とにかく情報が全く足りず「だから何だ」以上の感想を抱くことができません。とりあえず写真見せろと言いたくなるのが人情というものです。要約文というのは基本的に説明不足なものです。特に1行で纏めるトピックセンテンスともなると尚更です。だからこそ、その要約文に対する当然の突っ込みを想定して、それに応える形の
パラグラフとは要するに冒頭に置いた要約文とその補足文を、1パラグラフにつき語るトピックは1つだけというルールに従って書くだけの簡単なテンプレートです。これが基本です。
一応、
1 そのパラグラフの趣旨を明らかにし。
2 その趣旨を自然な形で発展、または補強。
3 そのパラグラフの趣旨を強調、または何か重要な結論を述べる。
これが僕なりのまとめです。3は小説的には重要な観点かなと思っています。
では早速例文を書いてみましょう。アキラくんがファンタジー世界で演説中に暗殺された場面です。
悪文
白昼堂々、ロイヤル王国の豚貴族として高名なアキラはスナイパーに心臓を撃たれて暗殺された。街中で独裁主義の必要性について熱弁している最中の悲劇だった。なぜ撃たれたのか、それは誰にも分からない。ただ、炎魔法の中でも弾速と貫通力に優れたファイアーバレットと呼ばれる魔法で心臓を撃ち貫かれたという事実があるだけだった。ヒロシは悲鳴を上げた。世界で最も尊敬する偉大な政治家である豚貴族のアキラが目の前で暗殺されたからだ。あまりにもショッキングで許せない光景。ヒロシは憤った。必ず暗殺犯を殺してやる、と。
2つのトピックが入り混じっていますね。アキラが暗殺されたというトピックと、ヒロシが復讐を決意するトピックです。入り混じっているというか雑にくっつけた感が半端ないですが……とにかく良文にしてみます。
良文。
白昼堂々、ロイヤル王国の豚貴族として高名なアキラはスナイパーに心臓を撃たれて暗殺された。街中で独裁主義の必要性について熱弁している最中の悲劇だった。なぜ撃たれたのか、それは誰にも分からない。ただ、炎魔法の中でも弾速と貫通力に優れたファイアーバレットと呼ばれる魔法で心臓を撃ち貫かれたという事実があるだけだった。聴衆の悲鳴の中、薄汚い断末魔をあげながら、穴の開いた貴族用の豪華な服から溢れる血を必死に手で抑えてアキラは死んでいった。
最前列でアキラの演説に聞き入っていたヒロシはその様子を見て思わず悲鳴を上げた。世界で最も尊敬する偉大な政治家である豚貴族のアキラが目の前で暗殺されたからだ。あまりにもショッキングで許せない光景。ヒロシは憤った。必ず暗殺犯を殺してやる、と。
2つのトピックを2つのパラグラフに分けて割り振りました。ちょっと工夫しただけですが見やすくなったのではないかと。
前半、曖昧にいつの間にか繋がっていた2つのトピックの境目をはっきりさせるために、あと、アキラが暗殺されたという趣旨のトピックセンテンスを強調するために、最後にトピックセンテンスを強調するためのサポートセンテンスを追加してます
。
3 そのパラグラフの趣旨を強調、または何か重要な結論を述べる。
の強調を重視した終わり方です。アキラが暗殺された感が強調されたのではないでしょうか。
後半も、文章冒頭に最前列で聞き入っていたと言うディティールを追加してヒロシがアキラの猛烈なファンであったことを分かりやすくし、トピックセンテンスに相応しい冒頭文にしています。大分視覚的にも情報的にも見やすくなったと思います。1パラグラフで扱うトピックを一つに絞るだけで、トピック毎にちゃんとパラグラフを区切るだけで、大分見やすくなるものです。意味内容もですが単純に視覚的に分かりやすくなるのも大きいです。文章は絵なのです。象形文字から発展して今の文字が出来たように根本的には絵なのです。だから視覚効果というのはとても重要です。だから視覚的にも分かりやすく文章を配置しましょう。
最期のパラグラフは、
3 そのパラグラフの趣旨を強調、または何か重要な結論を述べる。
の重要な結論ですね。ヒロシ君が暗殺を目撃した結果復讐心を抱くと言う重要な結論を述べています。リアクションといってもいいかもしれません。小説を書く場合、最後がトピックセンテンスに対するリアクションで終わるケースというのは非常に多いです。
例えば、またちょっと例文を書きます。学くんが藤乃さんに通学路でいきなりキスされる場面です。
通学路、一緒に下校をしている最中、藤乃は唐突に学にキスをした。不意打ちの頬へのキス。一瞬、しかし確かにそれは行われた。クールで無表情で、しかし顔がいいことだけは学校の誰もが認める藤乃のキス。学は動揺のあまり速攻で側溝に足を引っかけてドブ川に落ちかけた。その腕を掴んで学を自分の方へと引き寄せた藤乃がグイッと顔を近づけて学に言う。
「この程度で動揺するなんて童貞なの? それじゃ、これ以上のことはできないね」
学の顔が真っ赤になった。
えー、なんとなく伝わったでしょうか。
もう一度パラグラフについて纏めます。パラグラフとは要するに、
1 トピックセンテンス(一行要約文)を冒頭に置く。
2 トピックセンテンスを補強するサポートセンテンスを後ろに綴る。
3 その2つを一つのパラグラフに付き取り扱うトピックは一つという原則に基づいて行う。
上記の3つを踏襲して作られた文章の纏まりです。そしてパラグラフ・ライティングとはそんなパラグラフを用いた文章を書くことを言います。
パラグラフについてとりあえずざっと一通り僕なりに説明しました。抜けはあるでしょうが今は気づけません。あとはアウトラインと、小説ならではのパラグラフについて軽く触れて終わります。
アウトラインとは直訳すると輪郭、概要、梗概などと訳します。パラグラフ的には梗概の意で使います。項目アウトラインと文アウトラインがあります。
項目アウトラインとはごく短い箇条書き要約文です。要するに目次です。
Hさんがアイドルのライブに行ってウンコを漏らしたというテーマに沿って試しに項目アウトライン――目次を引いてみます。
1 Hさん、母からリンゴを貰う。
2 Hさん、喜んでリンゴを食う。
3 Hさん、アイドルライブ会場へ。
4 Hさん、腹の異変に気付く。
5 Hさん、ウンコを漏らす。
この項目アウトラインを短い文章にしたものが文アウトライン――トピックセンテンスです。パラグラフの冒頭に置く文章なのでもう少し詳しく書き込みます。では項目アウトラインを文アウトラインに――目次をトピックセンテンスにしてみましょう。
1 推しのアイドルIのライブにそろそろ出かけようかと準備していたHは、出かける直前に母からリンゴをプレゼントされる。
2 母からのプレゼントにテンションの上がったHはその場でリンゴを丸々一つ10秒で食べきった。
3 Hはとくに何事もなくライブ会場に付き、整列、入場、開幕から始まるIのライブを思いっきり楽しむ。
4 ライブ開始から30分後、Hは腹が痛み出すもIのアイドルを一秒も見逃してなるものかと男らしい決意をする。
5 肛門括約筋のHPが0になったHは何のためらいもなくウンコを漏らしてライブを心ゆくまで楽しんだ。
パラグラフの冒頭文としてまぁ見れなくはないくらいにはトピックセンテンスらしくなったのではないでしょうか。これを読むだけ一連の流れが一応分かりますね。
ついでなのでこのトピックセンテンスサポートセンテンスを付け加えてパラグラフにしてしまいます。
1 推しのアイドルIのライブにそろそろ出かけようかと準備していたHは、出かける直前に母からリンゴをプレゼントされる。何の脈絡もないプレゼントだった。このタイミングでプレゼントする真意を測りかねつつも、母からのプレゼントなのでHは無条件で喜んだ。
2 母からのプレゼントにテンションの上がったHはリンゴを丸々一つ10秒で食べきった。喰い終わってからなんかちょっと味がおかしい気がしたが芯まで食ったせいだろうとHは自分の中で結論付けた。ライブ前のいい腹ごなしになったとHは母と親指を立て合ってからライブ会場に向かう。
3 Hはとくに何事もなくライブ会場に付き、整列、入場、開幕から始まるIのライブを思いっきり楽しむ。Iのライブは最高だった。伊達に最新曲がPV公開1ヵ月で20億再生を突破していない。再生回数=クオリティ。世界で一番売れてるコーラは世界で一番うまい飲み物。そんな考え方を持つHはIの歌とダンスのクオリティを何ら疑うことなくサイリウムを頭上で振り回してIのライブを心の底から楽しんだ。
4 ライブ開始から30分後、Hは腹が痛み出すもIのアイドルを一秒も見逃してなるものかと男らしい決意をする。もちろん耐えうる限りは耐える。しかし耐えられなくなったからと言ってライブを途中で抜け出すのはNOだ。絶対にNOだ。断じてNOだ。なにせ今Iが歌って踊っているのは再生回数20億回の超人気曲アイドルなのだ。見逃すなどありえない。アイドルに限らずIのライブを見逃すなどありえない。恥とライブ。天秤に掛ければ後者が地につく。Hは恥ライブを決め込む覚悟を決めた。肛門など決壊するに任せればいい――。
5 肛門括約筋のHPが0になったHは何のためらいもなくウンコを漏らしてライブを心ゆくまで楽しんだ。人込みがHの周りだけ空いたことによってむしろより一層ライブを楽しめた。身も心も凄まじい開放感だった。こんな非日常感溢れたライブは生まれて初めてだった。テンションがおかしなことになっていた。凄まじく楽しかった。このライブは間違いなく生涯で一番のライブ。やはりIは完璧で究極のアイドル。そしてやはり母のやることは何一つとして間違いはない――最高のライブ体験をくれた母にHは心の底からの感謝を捧げて、ライブが終わるまでひたすらにぶち上がり続けた。最強で無敵の精神状態、そして完璧で究極のライブだった――。そしてもちろんライブ終了後すぐにHは女子トイレに駆け込んでスカートの中を猛烈に洗い生理用品入れの中にパンツは捨てた。Hはルンルンを買ってお家に帰った。
トピックセンテンスにサポートセンテンスを付け足したことによって、ただの一行要約文から人に読ませるに値する文章の纏まりへと、小さな小説へと昇華したのではないかと思います。台詞もないし少々味気ないですがね。
トピックセンテンスは要約文です。けどその要約文に補足を入れることで立派な文章――パラグラフとして生まれ変わるんです。でも、要約文としての側面も持っているから論旨が把握しやすく、特に冒頭文だけで文章が成り立っているから時間がないときはさっと冒頭文だけ読んで内容の把握もできる。そのような2重構造が分かりやすと詳細性を産むんです。
以上で今回の話は終了です。
今日の没例文4
ヒロシはアキラにキスをした。柔らかいのに弾力に満ちた不思議な感触。だが男にやられて喜ぶ趣味はアキラにはない。アキラはヒロシの横っ面を弾き飛ばした。頬を抑えながら気持ち悪い角度でアキラを見上げてくるヒロシにアキラは指を突き付けて唾を飛ばした。
「このホモガキが! 美少女に生まれ変わってやり直せ!」
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