第3話 小説を構成する2つの要素、文章力と物語力は全くの別物。だから小説を書いて同時に鍛えよう

 タイトル通りです。文章力と物語力は別物だという話です。


 初心者の内は、何となく文章が上手くなれば十全に物語を表現できるようになると思いがちですが、まぁそう上手くは行きません。短編くらいなら文章が走るままに書いても完結させられますが、長編となるとまず無理です。


 理由は単純で、長編ともなると、考えること、決めておかなければならないことが多すぎて、考えなしに書いたら無限に物語が破綻していくからです。ワーキングスペースが広い――一度に思考できる容量が多く思考速度が速い人間ならば0ベースから長編を書くみたいな荒業をこなせますが、精々1話3~5000文字程度が思考の射程距離な普通の脳味噌をした人間にはまず無理な離れ業です。


 だからこそ、長い物語を書くためには、普通の人には脚本術という補助輪が必要になります。でないと整合性のある物語は書けません。


 そしてその2つを同時に鍛えることができる練習方法がタイトルにある通り小説執筆です。難しいことを考えなくとも小説を書いていれば両者ともに鍛えられていきます。プロがよくとにかく小説をたくさん書けと言うのは、結局それこそが一番効率のいい練習方法だからです。


 下手でも、ゴミでも、糞でも、小説を一つ完成させれば、間違いなく成長できます。完成させればさせただけ実力は向上します。その時は分からなくても、あとから気づきます。前に進んでいることに。


 もちろん、下手糞な小説を書くことはきついです。10年以上地獄のような思いをするかもしれません。何一つ楽しくない、ただただつらい、憧れだけで書く凡人に取って小説執筆とはそれでも離れられないもはや殆ど呪いのような代物です。それでも理想の小説が書きたいならば、歯を食いしばって、何年何十年と亀の忍耐と牛の歩みで進んでいく他ありません。同じ場所で頑張っていた人間がスマッシュヒットを飛ばした。自分よりあとから始めた人間が兎の駆け足で自分を追い抜いていた。そんなやるせなく自分に絶望するような思いは何百回とすると思います。それでも道はそれしかありません。


 凡人にできることなど長期間血を流し歯を食いしばって努力し続けることくらいです。それでも天才には叶いません。こと小説は脳の資質が大きいです。デビューできる可能性など1%もありません。プロデビューどころか小説投稿に足る作品すら10年書けないかもしれません。


 でも、それでも、自分の友達を作ることはできます。自分の孤独を慰安することはできます。自分の自尊心を守ることはできます。自分の理想のライトノベルを書くことはできます。そして自分を成長させることができます。それだけでも小説を書く意味はある。


 この講座はプロデビューを目指すための講座ではありません。ただ一人、趣味で小説執筆を楽しむ。そんな終着点を目指した講座です。ライフスタイルとしての小説執筆を、生涯の趣味としての小説執筆を目指そうと言う講座です。


 そのためには、とにかく小説を書くしかない。けど、凡人にはその小説を書くと言う大前提ができない。だから前に進めない。はじめの一歩を踏み出せない。ならばはじめの一歩を踏み出すためにはどうすればいいか。


 次の話からそのはじめの一歩の踏み出し方を語っていこうと思います。


 文章力編と脚本術編、2つに分けて語ります。それっぽいだけで曖昧模糊な技術論は語りません。実戦的で明確な、今すぐ実行できるコツを何個か語ります。それを道標に、書くのをやめた人も、また小説を書き始めて欲しいです。


 小説は人間を成長させます。

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