第3話 お仕事開始

 朝、私は微睡の中で幸福感を得ていた。


 ある異世界の賢者が言った『温かい布団の中で寝る、こんな楽しいことが他にあるか』です。


 そんな気分いると……猫パンチをしてくる黒猫がいる。ララさんだ!


「い、い、い、今、起きます」

「にゃーん」


 今日から『にゃんこ族の小部屋』でお仕事なのだ。いつの間にか、黒猫のララさんが人型になっている。


「起きてくれて安心しましたわ。さ、お仕事です」


 私は朝食を食べるとフリルの付いたメイド服の様な制服に着替える。


 よし、初仕事だ。


「カナナさんはお客さん来るまで商品のホコリを落としてくれる」

「はい、わかりました」


 はたきを渡されてお仕事スタートだ。私がポンポンと綺麗にしていると。瓶に入ったポーションが並んでいる。


 高いなーうちの田舎では薬草をすり潰して添加物を加えて完成なので安く手に入る。


「何でポーションがこんなに高いのですか?」


 ララさんは首を傾げて困った様子だ。


「これね……有名な錬金術師のブランド品なの。仕入れ値が高いから、高く売らないとダメなの」


 大人の事情か。田舎者にはわからない世界だ。


『カラン、コロン』


 お店のドアが鳴る。お客さんだ。


「こんにちは、何時もの頭痛薬ある?」

「はい、こちらに」


 ララさんが接客を始める。どうやら、常連さんらしい。


「ダメですよ。お薬に頼るのは、仕事を休んで休息を入れないと」

「ララさんにはかなわないな、それでも忙しくてね」

「はい、はい、頭痛薬の飲みすぎには気を付けて下さい」

「ありがと」


 そう言うと常連さんは頭痛薬を買っていった。これが雑貨屋の仕事なのか、勉強になる。私は頭の中にメモを取るのであった。


***


 えー今日の仕事は……。在庫を確認して発注書を書いてと。


 ブランド品のポーションがあまり無いや。


 十と……。


 それから次がクリスタルのコップが五と。


 それから数日後の事です。


「何ですかこのブラント品のポーションの山は!!!」

「それがね、十パックを十発注したらしいの」

「あいたたたた、やってもうた。でも、キャンセルすればいいのでは?」

「偉い錬金術師さんの受注生産だからキャンセルが利かないの」

「はい?」

「これを 全部売るの」


 私は頭がクラクラしてきた。こんな高いポーションなど沢山売れる訳がない。


 しかし、私の失敗だ。ここは心を鬼にして悪どく商売をすることにした。


 先ずはカラの入れ物を用意して、ホップに『手作りポーション金貨三枚』これをブランド品のポーションの隣に置く。ブランド品のポーションが金貨3枚と銅貨2枚なのでブランド品のポーションが安く感じる。存在しない手作りポーションが売り切れたかのように見せるのだ。


 すると、ブランド品のポーションが売れる、売れる。いつもの三倍は売れた。


「これは犯罪では?」


 ララさんが心配そうに私を見ている。


「大丈夫です、手作りポーションなのでいざとなったら作ればいいのです」

「確かに手作りポーションを幾らで売ろうとこちらの自由……」

「私の勝です」

「でも、この売り方は一回だけよ」

「はーい」


 こうして、誤発注のハプニングは終わったのであった。

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