第11事件「課題 凪期間 訪問」


「今日は野本の家で遊ぶことになってるから」


 六家はそう言って七寸の誘いを断ろうと思った。先約が優先されるのは遊びの基本である。


「じゃあ、あたしも行く」


「え?ゲームやったりするだけだぞ」


「いいもん!行くもん!」


 駄々っ子のように言うことを聞こうとしない七寸。


「ま、野本に確認するか」


 一人増えるくらい大丈夫だろう。そう六家は思っていた。


「いいぜ、どうせみんなでゲームやるだけだし」


 あっさり了承してもらえた。やはり野本は細かいことに拘らない性格のようだ。


「じゃ、昼食べたら、大沢の家来てくれ」


 大沢の家はよくみんなの遊び場になっていた。昨日も野本は大沢の家で遊んでいて、人の家でアイスを3つも食べたなんて言って自慢をしていた。


「ってことだから。また大沢の家で会おう」


「あたし、大沢君の家、知らないんだけど……」


「あ、そうか。じゃあ、ボクがりずんの家に行くよ」


「いや、学校で待ち合わせでいいわ。助手に悪いから」


「でも、りずんの家から大沢の家の方が近いけど」


「いいって言ったらいいの!」


「ま、いいならいいけどさ」


 七寸はいつになく強い語気で言った。そのことに少し違和感を覚えた六家ではあったが、気にしないことにした。


 個人懇談期間はまだ続いていた。だから遊ぶ時間はたくさんあった。いつもこうして学校が早く終わってくれたらいいのに、なんて思いながらジリジリと照つける太陽を見つめた。


「あ、言ってなかったけど、先に宿題やるから。宿題持ってきてくれよ」


「どうやら大沢の家は遊ぶ前に宿題を片付けるルールらしかった」


「オッケー、持ってく」


 六家は頷きながら言った。


 放課後、昨日とは違い、今度はお互いに定刻に集まっていた。


「助手、さあ行くわよ」


「うん」


 心なしか昨日よりもそっけない感じがする。だが、ただの思い違いかもしれない。そう思いながら六家は自転車のペダルを回した。


「今日って大沢君の家に何人来るの?」


「んー、中島と野本と生田は来るって言ってたけど」


「ふーん、そうなんだ」


 なんてことないことを話しながらあっという間に大沢の家の前までたどり着いた二人。


――ピーンポーン。


 インターホンを鳴らして大沢が出るのを待った。


「六家と七寸、入って」


 インターホン越しに声がしてオートロックが開いた。


「大沢君の家ってけっこうお金持ちなんだ」


「ま、そうだな。家の中も広いし」


 こうして二人は家の中に入った。


「あ、梶本も来てたんだ」


 大沢の家には生田、野本、中島、梶本が集まっていた。ここに六家たち二人を加えると計七人で遊ぶことになった。


「先生、宿題多すぎるんだよな」


「わかる」


 そんなことをぶつくさと言いながら、きちんと宿題をこなしていった。


――宿題を終えた後、事件が起こった……

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