第4事件「相方 誤認 一部始終」


「あたしは今回、助手に力があるのか見極めたいから黙っておくよ」


 そう言って傍観の姿勢を取る七寸。


――探偵が事件二つ目で匙を投げたらダメだろ。


「細かいことはいいの!ワソト君、それじゃ、君の推理を聞かせてもらおう!」


「推理も何も、証拠がなさすぎる。誰か犯行を見ていた人間でもいれば、事件はあっという間に解決するのに……」



「この机に置いてあったはずなのに、気が付いたらなくなっていたんだ」



 クラスの給食当番の子に聞いてみたものの、どうやら犯人を特定できる情報はなさそうだった。



「そもそも、一人一人の給食を調べてみれば、犯人が分かるじゃないか!」


――我ながら妙案である。


「いや、もちろんそれはチェックしたよ。でもポケットに隠してでもいるのか、誰の机の上にもなかった……」


 しばらく考えた後、六家はある答えに辿り着く。


「分かった! 犯人は七寸だ!」


――そうだ。いつもは探偵気取りに身が入るはずなのに、今回は乗り気じゃない。これは自分が犯人ですと言っているようなものだ。


「いや、待って。あたしが犯人? いったい何のために?」


「僕を試すためだ。さっきりずんは言っていた。それにさっき、『警部が犯罪を起こすことってあり得ると思う』か?って聞いていた。それが何よりの証拠だ!」


――探偵役が犯人にも成り得るということの伏線だったに違いない。


「え、いや、それは、その……えっと」


 露骨なまでの怪しい反応。これは六家の推理が的中したことに他ならなかった。


「犯人は、七寸りずん!君しかいないッ!!」


――なんか犯人を追い詰めるのってきもちいい!


 普段は助手に徹している六家だったが、この探偵の指差しの快感に目覚めてしまった。


「みんな、すまんかった。あいさつ、しよう。日直……」


 山中が押っ取り刀で駆けつけた。息が少しあがっている。日直の山野と吉田が号令をかけようとした。

 そこに……


「先生、ポケットの中身」


 七寸がそう言って、山中のポケットを指差した。


「ん? ポケットか?」


「まさか……」


――犯人は先生だった!?


「あーすまん。すまん。さっきビニール袋が必要で中に入ってたジャムまで持って行ってたんだった……」


「七寸、どうやって推理したんだ!?!?」


 興味津々の六家。さすが七寸、自分が信じた人間はやはり凄かった、尊敬に値する人間だと言わんばかりの眼光。だが、対する七寸の反応は意外にも落ち着いていた。


「いや、まあ、それは……」


 やけにはぐらかす七寸。この時、六家の脳裏にある考えが浮かんだ。


「あっ! りずん、まさか先生の犯行を見てたな!」


 だからこそ、今回は口出しをしなかったのだ。犯人を知っていたからこそ口を閉ざし、口を出さなかったのだ。


「……べ、べつにぃ。ワソト君をためしたかっただけだしぃ……」


 図星だった七寸はばつが悪そうに言った。


「じゃ、余った給食じゃんけんするぞー!!」


「じゃーんけーん」


――ポン!


「ぐああああああ、負けたぁああああああ」


 七寸は大好きなハンバーグにありつくことはできなかったのであった。

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