第3話 B

「あれ? きょーこいないじゃん」


 美海のおっぱい揉んでる間にきょーこがいなくなってる……もしかして用事あった? いや、でもそれなら事前に私に伝えてくれるはずだもんね。委員会は同じだし。


 えー、なんだろう。もしかして、私なにかしちゃって怒らせちゃった? 


「あんたなにしてんの、孤鰤こぶりの席見つめて」


「いやさ、美海はさすがに知らないか」


「なにを?」


「きょーこがどこいったか」


 もしかしたら私が美海の後ろにいるときに帰ってる可能性あるかも。そしたら前向いてた美海なら見てると思うんだけど。


「知らんねー。てか、あんたがいっちゃん知ってるんじゃないの? 孤鰤のこと」


「それはもちろんそうだし、そうじゃなきゃなんだけど」


 きょーこが私以外と親友とか言い出しても絶対信じない。ていうか信じたくない。


 せめてなにか先に話してほしいし、話してくれると思ってるし。


「じゃあ、誰にもわからんよ。せめて孤鰤の近くの子ならわかるだろうけど、皆葉いないし一番後ろだからほかいないし」


 凛かー。特別きょーこと仲良さそうにしてるとこ見たことないなぁ。


「そだよね。ありがと」


「何の役にも立ってない気がするけど、あんたがそれでいいならまあいいか」


 美海にまた明日と言って鞄を持って教室から出る。とにかく歩き出そう。


 学校にいる確率でいえば低いんだよね。ちゃんと宿題出すタイプで補習もなし、かといって図書室にある自習用の仕切りがついた席を使うタイプでもない。


 やっぱり私が原因? 私以外できょーこが悩んでるなら絶対私に相談してくれるから、よくよく考えればそれしかないか。


「そういえば、今日、なんだか暗かったときあった」


 靴を履き替えながら呟いた。


 あのときのことを思い出してみよう……うん、間違いない。考えごとしてたって言ってた。


 きょーこのことだから、私がちゃんと吐き出せるようにしてあげないと溜め込んじゃいそう。人を傷つけるのが嫌いな優しい子だから。


「何も言わないで家に行くのがよさそう」


 好きないちごのクレープを持っていこうかな。うーん、それで釣ろうとしてるって思われるのは良くないか。


 原因が私なら一層印象悪いよね。


 待っててね、きょーこ。


 入学してから初めてひとりで帰りの電車に乗った。

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