第2話 A
ホームルームが始まった。優しいほんわかした先生はこの時間を楽しそうにこれからの行事や学校連絡について話している。
加菜ちゃんは……前の席の天羽さんの髪を触ったり、頬を突いたり、天羽さんは可愛いから多分お気に入りなんだろうな。今日最推しだなんて言ってた茉莉ちゃんも天羽さんも背が高くてお胸が大きくて、可愛い子たち。
背が小さいしぺったんだしいつもうしろをついていくだけだし可愛……くない私はもはやアンチになっているんじゃないかなってくらい合わないもん。
でもやっぱり、ふたりを見てたら胸が痛くなってくる。なんかやだなって。
席が離れてなかったら私があんなふうにしてもらえてたかもしれないのに。
「……加菜ちゃんのばか」
「ん? 京子、なにか言った?」
どうしよ、皆葉さんに聞かれた?
「う、ううん、なんでもないよ」
「ほんと?」
「うん、大丈夫だから」
危なかったぁ。ちゃんとは聞かれてなかった。
皆葉さんも加菜ちゃんと仲良しだからおかしな形で伝わってたかも。
「大丈夫な人は大丈夫だからなんて言わないんだよ。なにか言ったか聞いただけなのに」
なんでそんなとこまで気にしてるの。
どうしよ、誤魔化すにももう疑いの目を向けられてるからそれが強まるだけだもんね。それなら……そうだ、すこし気を紛らわせたかったから誘おうかな。
加菜ちゃんは天羽さんと今も楽しそうに遊んでるし。私がいつでも待ってるだなんて思ってるならわかってもらわないと。
「ごめんね。皆葉さんの言う通り、ちょっと詰めてることっていうか、考え過ぎちゃうことがあって……」
「加菜のことでしょ?」
「えっ、どうして?」
「どうしてっていうか、京子が悩むのなんて加菜以外思いつかないし」
そんな人脈狭いように見えてるのかな? それとも他の人には接し方が雑になっちゃってるとか? それだったらごめんだけど。
まあでも話は進みやすいよね。
「そう思うならこのあと帰り、一緒に帰ってくれないかな?」
「いいよ。私から声かけたし」
それからすぐに先生の声が止んだ。今日のお話は終わりみたい。
加菜ちゃんがこっちに来る前にさっさと帰っちゃおう。
「皆葉さん、行こ」
「前、歩きな。見られたら止められるでしょ」
ちゃんと考えてくれてるんだ。やっぱりいいなぁ、この感じ。高校生になるまでは加菜ちゃんがいっぱいくれたのに。
教室から出る。加菜ちゃんの声は背に届かない。皆葉さんがすごく上手に私を隠してくれているから。
……あーあ、めんどくさいなぁ私。
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