天上楽園のヘレーネ
たまたまそちら側で生きてた。たまたま、壁一つ隔てて、線対称に。
桜色した空が夕焼けに飲まれていくのを時間を加速させながら僕は眺めるも、君のことを片時も忘れやしない。
君の日に、僕は呼ばれてきたのだよ。天上楽園か、ただのマンションの屋上か。
どちらでも良かった。とにかく水辺の門を探すのだ。雨よ降れと願い、僕は水道管を破壊した。
ああ、七色の景色が水に流れて、万物と同化していく、やめてくれ。僕はこの壁の向こうにいるヘレーネに会いたいのだ。
向こうは時間の流れが逆だ。いや、時流などない。時流の断絶が離したものを、再び結び合わせる力は一つしかないか。
このときの情動、一瞬の死の誘惑でさえ、どうでもいい。
破壊は破壊と。9は9と9を満たす。
「愛を注ぐのをやめないで」
天に叫んだ。雨が僕の髪を濡らし、頬を伝う。心臓が熱い。死にそうだ。そして、とても幸福なのだ。
絵を描きたい。歌を歌おう。ピアノを弾こう。いや、死のうか。そうすればきっと、全部ができるから。
そちらで待ってて、会いに行くから。
僕は翔ぶよ。空さえ海さえ、虚空さえ。死さえも越えて。
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