第58話 地味で平凡で冴えない男子
203:Name もどあき
魔王さまの配信を編集したで
【魔王VS超獣神マッハダイフーン~南海の大決戦~】(URL―)
208:Name もどあき
気合入りすぎ編集吹いた
211:Name もどあき
>気合入りすぎ編集吹いた
ええもん見せてもらったしさ
これはがんばらなきゃと思って
213:Name もどあき
誰かいつかやると思ったが
あれだけの超クオリティなゴーレムを創るとはな
217:Name もどあき
すごいよね
ゴーレム5神合体からのマッハダイフーン
224:Name もどあき
ゴーレムじゃないですー
神獣の魂が宿った石像ですー
時を越えて復活したんですー
230:Name もどあき
なあヴァレンシア学園の人造ゴーレムだって国の許可が必要なのに
あれだけのものを創って輸送してきたって違法じゃ……
234:Name もどあき
ただの神獣の魂が宿った石像だからセーフ
235:Name もどあき
ただの神獣の魂が宿った石像ってなに
242:Name もどあき
合体とか巨大ビームとかアリなんだなって
252:Name もどあき
巨大ダイフーンソードを魔王さまが指で白刃取りしたときは盛りあがったねー
253:Name もどあき
次はどんな変人があらわれるのか楽しみで楽しみで仕方がない
257:Name もどあき
もはや魔王さまの正体なんてどうでもよくなっているな
260:Name もどあき
今を全力で楽しもうぜ!
※※※
掲示板を閉じて、スマホをポケットにしまう。
学校の休憩時間。
魔活の反応が気になって調べていたけど、反応は上々のようだ。机にへばーっとうつぶせになり、ひとまずホッとする。
ガヤガヤと、クラスメイトの雑談が耳に聞こえてきた。
学校でのボクはあいかわらず地味で平凡で冴えない男子だ。
スキル【正体隠し】を使わなくても、ボクが巷の魔王だなんて気づく人はいないんじゃないか。そう思えるほどには存在感がうすい。
アルマの席は空いている。
彼女は今月末に引っ越すようで、すでに学校への手続きも済んだようだ。
美少女のアルマが転校すると知ってクラスメイトは大いに嘆いていたが、その日の内にいつもの日常に戻っていた。
そんなものなのかなと思う。
魔王が突然いなくなっても騒ぎはするだろうけれど、すぐに別の新しい話題にみんな飛びついていく。それが当たり前なのだと思う。
今のところ、まだやめる気はないけどさ。
ただ、アルマのいない魔活はまだ慣れなかった。
「鴎外ー、次は移動教室ー」
机でボンヤリしていたボクを、クラスメイトが呼んだ。
「おー。ありがとー」
最近は少しずつクラスメイトと話すようになっていた。
ボク自身なにかが変わったわけじゃないのだが、今まであった見えない壁みたいなものがとっぱられたみたいに、少しずつ溶けこんでいっている。
まるでボクの世界が、彼らの日常に浸食するように。
いや、たんに今までボクのこだわりが強すぎただけなのかもしれない。
自分だけだった世界がすこし広がったおかげで、周りとのズレを受けとめることができるようになったのかも。
そんなものだと思う。
そうやって、世界がまわっていくのだと思う。
教室を去ろうとして、ついついアルマを探してしまう。
彼女はいないとわかっているのにと苦笑した。
教材を持って、一人廊下を歩いて行く。
上級生の男子二人が側をとおりすぎていった。
「お前もう受験勉強はじめてんの? はやすぎね?」
「オレら二年だぜ。当たり前だろ」
「ええー……もっと今を楽しもうぜー。
目の前のあることを直視しよーぜー」
「目の前にあるものをみたからだろう。
お前もなにかしたいことがなければ、大学は真面目に考えとけって」
「そっだなー……」
大学受験か。
ボクにはまだ先のことだけど……どこに行くかは考えたほうがいいのかも。
受験が忙しくなったら、魔活は控えるべきかな。
大学生になったら……つづけているのだろうか。
社会人になったら……さすがに。
その前に魔王は世間に飽きられていそうだが、つづけるだけつづけてみよう。
数年後、道端でバッタリと出会ったアルマに『昔はこんなことがあったよね』と笑いあい、良い思い出だったとふりかえる日がくるのかな……。
「……アルバイト、またはじめるかな」
趣味のためじゃなくて、もっと社会を知るために。
そうやって、ボクは穏やかな日常にいた。
授業が終わって、自宅マンションに帰宅する。
母さんから『今日帰ってくるのが遅いー』とメッセージがきていた。
仕事を休んだ分、ちょっと忙しいようだ。
母さんが帰ってきたらすぐに休めるよう、家事はちゃちゃっと済ませておく。
それから晩ご飯の準備のため、キッチンに立とうとしたのだが。
――玄関のチャイムが鳴った。
ボクはインターホンを押す。
『マガワ急便ですー。荷物お届けにまいりましたー』
帽子を深くかぶった女性の配達員が、画面に表示されていた。
母さん、荷物でも頼んだのか?
「はいはーい、今あけますねー」
ボクは玄関まで小走りで駆けていき、ガチャリと扉をあける。
女性の配達員がボクに荷物を差しだしてきた。
「こちらの住所で間違いありませんか?」
伝票には『鴎外みそら』と書かれている。
送り主は書いていない。
……誰からだろ?
ボクは配達員に視線を合わせようとして、声が出そうになる。
その前に荷物が押しつけられて、メッセージカードらしきものをこっそりと渡された。
「サインはいりませんので」
「………………はい、お疲れ様です」
「失礼しましたー」
女性の配達員はそう言って、元気よく去って行った。
化粧や雰囲気で最初まったくわからなかったけれど……。
どうしてこんな回りくどい方法で接触してきたんだ?
赤沢先輩の行動に、ボクは首をひねりながらメッセージカードを読む。
『いつかのココア分。
部屋のカーテンを閉めてから箱をあけてねー』
…………。
顔に出ないようにしながら、気をひきしめる。
いかにもエロいものを通販で頼んだ男子みたいにいそいそと自分の部屋に向かい、カーテンを閉める。
そして、箱をゆっくりとあけた。
「タブレット……?」
箱には、タブレット端末が入っていた。
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