掲示板『もう一つの可能性』
【どこかの場末のカルト的掲示板】にて
1:Name 魔王
我、前世が魔王かもしれないのだが
2:Name くらきもの
まずお医者さまに通うのをオススメするぞ
4:Name くらきもの
コイツ前にも書きこんできたパスタ好き魔王じゃないか
巷の魔王もパスタ好きみたいだが
5:Name くらきもの
スレッドを立てておいて途中の議論には参加しないしさー
ここが場末の掲示板だからってそーゆーのアカンよー
6:Name くらきもの
オレたちがそうそう話にノる暇人ばかりだと思うなよ
7:Name 魔王
思慮深きお前たちの智慧を借りたいのだ
8:Name くらきもの
話を聞こう
10:Name 魔王
この世界は別のありえた世界と繋がりかけている状態だが
すでになにかしらの世界と完全に繋がっている可能性はあるのか?
12:Name くらきもの
そもそも完全に繋がった状態がわからないからなんともだな
15:Name くらきもの
繋がりかけた状態が次元境界いわゆるダンジョンなわけだが
浸食度合いが高いダンジョンは標準世界を違和感なく浸食してくる
だから世界を上書きするのではなくて世界と世界が融合するのが近いのではと論じられているな
21:Name くらきもの
以前の話題だけどさ
別世界の輪廻と繋がって魔王がこの世界に転生したーって話で盛りあがったよね
結局ありえないなーで結論ついたな
23:Name くらきもの
前提として魂が質量を持っていると考えた場合だけれど
魂が次元の裂け目というフィルターをバシバシ通過してくるなら
次元変数がもっと乱れていてもいいわけだしな
26:Name くらきもの
魂が霊魂つまりオカルト的なものと考えた場合でも
別世界とバイパスが繋がっている状態なわけだし
それならもっと前世信奉者が増えてもいいなとは思う
30:Name くらきもの
輪廻の仕組みなんてわからないが
現状で別世界とたくさん繋がりかけているわけだしな
ダンジョン化現象が発生してからの出生率は人口推移どおりだ
過剰な変化はない
33:Name 魔王
別世界の自分と繋がってしまう可能性はあるか?
35:Name くらきもの
それはどうなんだ……?
38:Name くらきもの
別世界の自分の可能性は示唆されているな
41:Name くらきもの
ただそれは広大な宇宙に自分たちと似たような知的生命体がいるかもーというロマン論だ
43::Name くらきもの
深海には深海人が住んでいる説でも可
45:Name くらきもの
んー……だけどもし別世界の自分と繋がりかけているのだとしたら……
標準世界を浸食はしないのか?
異なる可能性だけど同位体なわけだし
次元変数は大きくブレないかもね
46::Name くらきもの
魔王がそれだとおもしろいねー
繋がるの定義があいまいだけど
繋がった場合は弊害とかあるのかなー?
48:Name くらきもの
さあ楽しく陰謀論を語ってまいりましょうー
※※※
真夜中の自宅マンション。
ボクは自室テーブルに、スマホをこてんと置いた。
掲示板は陰謀論で盛りあがってきたので、これ以上は部外者のボクではついていけないだろう。
「繋がった場合の弊害か……」
ボクは胸をかきむしる。
いつもの中二病じゃない。
いや中二病を発症しているつもりはないのだけれど、アレを欲しがっていた。
「っ~~……!」
歯を食いしばって、衝動を押さえる。
これが魔王の衝動と呼ぶのであればそうなのだろう。
母さんを研究所で見送って、数日が経過した。
ダンキョー監視チームは解体して、ボクはこうして自宅マンションに戻ってきている。
とはいっても一人だけの生活だが。
母さんはいまだ研究所だ。
容態は一晩で安定したようで、すぐに元気になったらしい。
どうやって治ったのかと通話アプリ越しに聞くと、母さんは顔を真っ赤にして『お、女の人に、そーゆーことを聞いちゃだめだよー!』と怒っていた。なぜ。
とまあ経過観察ということで、母さんは研究所で生活していた。
ただ監視されているわけでもないらしく、たまーにアルマや赤沢先輩が面倒を見にくるので、快適な生活を送っているそうだ。
なので、ボクは現状一人暮らし。
クスノさんやミコトちゃんがこことぞばかりに面倒を見にくるので、とてもハラハラする日々を送っている。
「…………比較的平和だな」
内なる衝動をのぞけば、落ち着いた日々だ。
隔離されることも覚悟していたが、ボクの生活は脅かされていない。
赤沢先輩に探りをいれたけど、管轄が移行中とのこと。
「……そもそもボク、研究所は立ち入り禁止なんだよなあ」
研究所職員曰く、ボクがどんな影響を及ぼすかわからないとのことだ。
だったら余計に放置はよくないのではと自分事ながらに思った。
「次元同位体、か」
言葉が意味するものはなんとなくわかる。
あの強大な力を発現するときは、たしかに誰かと重なっている感覚がある。
アレが別世界の
ボクはSFなんかでいわれる特異点なのかも。
だから母さんだけじゃなくて、クスノさんやミコトちゃんに影響を与えた。
いつもなら『超かっこいいじゃん! 別世界のボクだよ! それも魔王! 最高だよ!』と大騒ぎするところだが、いやひとしきりハシャイだけれど、さすがに事態が大ごとすぎる。
ただの魔王なりきりプレイだったのに、どうしてこんなことに????
シャドウとかダークとか唱えて、一人で遊んでいた日々が恋しいよ……。
他の組織から接触はなーんもない。
ボクを管理せずに放置状態なのは、たぶん『怒りと反逆』がトリガーで力が増すと気づいているのだと思う。
今思えば、頭領はトリガーを探っていたっぽいよなあ。
ちなみに頭領のおもらし動画は、ちゅー太郎がなんか保存していた。
赤沢先輩は切り札だと喜んでいたが、ぜったいに使わないほうがいいと思う。
ただもしものことを考えて、いろんな手札は揃えていたほうがいい。
……なのだけど。
「手札をそろえたって、なにをどーすればいいのやら。
……そもそも研究所はボクをどうする気なんだ?」
国認可の組織がなにかを策略したところで、高校生がどーにかできるわけでもない。
トゥするにしても、子供の喧嘩じゃないわけだし……。
「アルマ」
名前を呼んでも、クローゼットからあらわれてはこない。
彼女とは、研究所で別れてからずっと会っていなかった。
「……どうして前世だなんて言ったんだろ」
ボクとアルマはほぼ間違いなく、同じ異世界の可能性と繋がっている。
彼女はボクの力を知っている節はあった。
というよりボクが魔王だと確信しきっていた。
どこまで繋がっているかわからないけれど、次元同位体のはず。
それに母親が断層次元収束化現象の第一人者なら、自分が何者かなんて知っていたとも思う。
それでも前世だと妄信しているのか……。
他に理由があるのかな……。
「……ボクを避けているよな」
メッセージを送っても反応してくれない。
既読がついているので読んでくれていると思うけれど……。
「アルマ…………ぐっ⁉」
ボクは胸をかきむしった。
魔王の衝動だ⁉⁉⁉
この衝動がくると、ボクはどうしてもアレが欲しくなる。
得体がしれなくて、形容できなくて、口にすると記憶がふっ飛ぶアレだ。
「ヴァヴァヴァルマーデッドが……食べたい……!」
前世でボクが好きだったいう料理。
肉を無性に食いたくなるあの衝動を何倍にしたような感覚で、ヴァヴァヴァルマーデッドが食べたくなっていた――
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