第13話 地味男子、ギルド戦でたたかう②
そして、光の線がボクたちに襲いかかる。
「魔王さま! お任せを!」
聖ヴァレンシア学園側の砦がぴかりと光ったかと思うと、ズキューンッと魔導光が一直線に伸びてきた。
アルマは大鎌で魔導光をなぎ払う。
彼女もやはり実力者だった。
「園井田さんのマジックガンによる長距離砲です……!
ここに釘づけにするつもりかと……!」
「で、あろうな」
だってボクたち2人しかいないし。
こっちのエンペリウムを常に脅かせておけば、動けないわけだし。
と、数百メートルは離れているであろう砦がぺかりと光る。
二射目だ。
アルマは大鎌で再度なぎ払う。
「魔王さま……! 園井田さんも今ので当たりをつけたでしょう!
次は高威力の魔導光がきます……っ!」
「案ずるな。真正直からくるのであれば御しやすい」
これに関しては慢心でもない。
ボク、防御手段はけっこう豊富なんだ。
ヴァレンシア側の砦が今度は強くぺかりと光る。
第三射だ!
太くなった魔導の光が届く前に、ボクはエンペリウム前に暗幕を展開する。
「
闇の魔術によって、レーザー攻撃がはじかれる。光は放射線状になって、森に散り散りになっていった。
ふっ……今のは魔王ポイント的に80点……いやダメだ!
なんかこう商品名みたいで、日常の生活臭がするし……!
くっ……四射目か!
「
四射目も防ぐと、チャットが大きく流れた。
『うおおおおお! あっさりとはじきかえした‼‼‼‼』
『さっきと同じ術みたいだけど、名前は違うのね???』
『きっと質が違うんだ! 相手もやっぱり強敵だってことなんだよ……!』
……技名が気に入らなくて、言いなおしただけなんです。ごめんなさい。
うーっ……一発目で技名をばしりと決めたかったな!
魔王的にも!
しかし、クスノさんマジックガンナーのスナイパーかあ……。
めっちゃかっこいいなああー‼‼‼
銃はぶっちゃけよくわかんないんだけど、長距離射程・スナイピング・ジャックポット・百発百中なんかその単語だけでかっこいいよね。
あとで、いっーーぱい讃えたい!
ここそこどこそこが、かっこよかったと褒めあいたい!
『見てっ! 魔王さまが不敵に笑っておられるわ!』
『こんな劣勢状況でもなんてお方だ……!』
あ、や、劣勢状況はなんともしがたいんだよな……。
人数差はもう絶望しかない。
以前ダンジョンコアを破壊したときみたいに、長距離闇魔術で相手砦のエンペリウムを破壊したくても……対策されているな。
長距離魔術はスキル【影の鼠】との併用技だ。
索敵鼠で位置をおおよそに把握してから闇魔術を放つので、座標に索敵鼠がいなければ無理。相手砦は防御術を施されているし、見張りでいっぱいだし、ボクの鼠も警戒されているみたいだな……。
もう術の性質を把握されている……一筋縄ではいかないよなあ。
今のボクができることは……。
チラと、アルマがひらいているステータス画面を見つめる。
「試作ゴーレムが進軍しておるな」
ライブ画面では、ヴァレンシア産の試作ゴーレムが森を進軍していた。
真っ白いゴツゴツした白銀のゴーレムで、全長は三メートルほどかな。目視でも、ゴーレム頭が木々の隙間から見えている。
ざっと30体ほどか……?
森に散らばり、ゴーレムの背後を生徒たちがついていっているようだ。
「魔王さま。ゴーレムを先頭に、小隊が分かれているようです。フィールド内の小型エンペリウムを破壊し、味方陣営にバフをかけるつもりなのでしょう」
「で、あろうな」
こっち二人しかいないしね‼
ボクたちをエンペリウム前で釘づけにして、そりゃあじっくり攻めてくるかあ……‼
ただ、森の中は索敵鼠への警戒がうすいようだ。
「いかがいたしましょう……? やはり、わたしが出陣いたしましょうか……?」
「なにひとつ問題ない」
内心いっぱいいっぱいだが、闇魔術を発現させる。
森の中で、暗黒の炎がゴオオオオと立ちのぼった。
これで一体の試作ゴーレムは機能不全にしたかな。
『おおおおお! 一発でゴーレムがオシャカッたああおああ‼‼‼』
『圧倒的劣勢でもまったく動じていない!』
『魔王さま素敵すぎます!』
ふふふっ……。
めっちゃくちゃ弱音を吐きたい……。
少しずつ迫ってくるヴァレンシアの生徒たちが怖すぎて、負けを認めたい……。
ダメダメダメ、魔王さまでいるときは魔王さまらしくいる!
ってーか今考えてみれば、それとなく負けを認めていたらアルマになにをされていたかわからなかったな……。
だからといって勝ち筋が見えないし。
あれ、詰んでる……?
『しかし、魔王さまはどうしてヴァレンシアの生徒を狙わないのだろうか?』
『彼らを削れば戦いも楽になるだろうに』
『魔王さまは彼らの核となるゴーレムを破壊してから攻めるおつもりなのだよ!
それこそ真綿で首を締めるように、ゆっくり、優しく、いたぶるつもりなのだ!』
『なるほど……さすが魔王さまだっ!』
『魔王さま! さすがでございます!』
違いますが????
リスポーン有りとはいえ相手生徒を攻撃するなんてできない。
試合後のことを考えても、なるべく穏便にすませたいだけですが???
この血の気の多いリスナーになにか言ってくれと、ボクはアルマに目をやる。
アルマは満足げにうなずいていた。
「さすが魔王さまです」
違いますが??????
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