再開

 ザーザーザーザー


 あれ?またこの音?でも今回の音は少し弱い、すごく痛いわけでも、苦しいわけでもない。ただ、これが心地よくも感じる。なんでかな?私は、周りの人を死なせてしまったから?失ってしまったから?喪失感からまた私は繰り返してしまった。何を?今私は何を言った?"繰り返した"?もしかして私の正体は、まさかーーー


 4月8日入学式。

 

 私は結局、父を探せぬまま、私は高校生を迎えてしまった。先程も言った通り私は通信校に通った。ただ、何も解決しなかったことが私にとっても悔しい出来事ではあった。母は死に、親しくなった友人までも失い、私はどうしたらいい?どうしたらこの苦しみが消せる?どうしたら悲しまずに済む?そういう事ばかりを考えて、私は入学式を終えたのだ。

 

 入学式では、雑音すら一切感じず、ただ時間が過ぎるのをひたすら待った。席は真ん中あたりで特に困ることは無かった。重いカバンを置き、一息つくと、後ろの席から見知らぬ女生徒が声をかけてきた。


「ねえねえ。貴方お名前はなんていうの?私は愛裏奈良よ!奈良ちゃんって呼んでね!」


そう声を掛けてきたのだ。私は今度は仲良くなろうだなんて微塵とも思わずただ"リカ"とだけ呟いてその場を去ろうとした。後ろから奈良の止める声が聞こえたが私は、聞かぬ振りをして足早に教室を出ていった。


 しかし、待っていたのは地獄であった。奈良を無視したことでそれがクラスに広まったらしく、私の虐めはその日から酷くなった。奈良本人はそれが起きていることは知らなかった。奈良以外の人達は私が無視したことにいい様に思っていなかったからだ。


 最初に始まったのは、殴る蹴るだ。最初からずば抜けて酷い扱いを受けた。しかし、中学でも似たような光景を見ているので私は、なんとも思わなかった。


 ただアンニュイな目をしたまま、ひたすら腹、頭、足などを強く蹴られ、挙句の果てにはトイレの便器に顔を溺れさせられ死にかけることも多々あった。そんな日々が一週間続いたある日、何かが変わった。


 いつもの様にまたトイレに呼ばれて向かおうとすると、見覚えのある影が隣を横切った。しかし、私は全く思い出せなかった。誰だっけ?私はこの人と仲が良かった、でも思い出せない、大事な人なのにどうして。私は頭を抱えた。またあの日の光景を思い出してしゃがみこんでみたが結局誰も助けてはくれなかった。


 私はこのままなのか、楽しみにしていた反面、苦しみにまた塗れてしまった。


 助けて欲しい、この苦しみの連鎖から手を差し伸べてほしい、私は心からそう願った。


あの日の短冊を思い出して。


 ザザザザザザザザザザザザ


 連続するようにまた雑音がなり始めたのだ。私は突然の雑音に耐えられず廊下で倒れてしまった。誰かが声をかけている、誰だろう、そう懐かしい人物をぼんやりと眺めながら意識を飛ばしてしまった。


 パチッと目を開くとそこは保健室だった。あの雑音はもう聞こえない。一体なんだったんだろうと思いながら私は起き上がる。目の前を見ると私は目を見開いた。


「おう、目は覚めたか?」


 何とそこには施設を移動してしまった日和蓮がいた。たった一つしか年が変わらないはずなのに蓮は金髪で少しボロボロの制服を着ていた。一体なぜ?あの後蓮はどこの施設に連れていかれた?まだ14歳だったはず、こんなにも偶然に出会うことはあったのか?そう頭の中で巡らせていると突然蓮の口が開いた。


「俺、施設を抜けたあと失踪してた父親に遭遇したんだよ。」


 そう、失踪していたはずの父と再開を果たしていたのだ。何故??何故父と再会できた?私はそれが疑問で仕方なかった。驚きながらも私は蓮に父のことを聞いた。そこには衝撃の事実を伝えられた。


「おかしいと思って僕も聞いてみた。父さんには隠し子がいたんだ。しかも優秀の。」


 それすらも驚き、隠し子とは一体誰なのか、父親とは一体何者なのか、問い詰めるように聞いた。


「父さんの能力は身の危険を感じる相手には雑音が生じる。その能力を引き継いでいるのが僕と君だ。日和リカ。」


 私は違う!!私の名前は!!日和なんかじゃ!!!そう大声を出すと、蓮はこう答えた。


「日和は父の旧名、君は母の名前を使われたんだよ。その能力を隠し切るために。決して表に出ないように。」


 確か、母の名前は


 [西園寺佳苗]


 そうだ。母は西園寺家を継ぐお嬢様だったんだ。だから私は、家柄を気にして苦しい生活を過ごしていたんだ。では君は??君は一体??きっと君は、


 兄妹だったんだね。


 誰も知らなかった事実をここで伝えられてしまったが、そんなことより私は最優先に聞きたいことがあった。


 [あなたと私の父親は一体誰?]


 そう聞いた時、私は聞かなければよかったと後悔したのだ。だって、だって、私たちの父親があの、


 母を殺した犯人だなんて誰も想像してはいないのだから。


 これから先もきっと想像はできない、だから、私は、その父の元の所へ行き、真実を聞き出す。なぜ私たち兄妹をバラバラにしたのか、なぜ殺そうとしたのか。


 その事実を明かしに、私は父に逢いに行くことにした。


 蓮に父と会ったのなら居場所は知っているはずだと聞いたが、蓮は、その時にしか会っておらず場所も言わずに去っていったといったのだ。もし話をしに戻ってきたのならきっと敢えて蓮に直接伝えたのだろう。私では、母親の恨みとして殺されてしまうからだと。


 何度も蓮は呼び止めたが、一度も立ち止まらず無言で去ったようだ。


 私と蓮は居なくなってしまった父親の居場所を突き止めにそして真実を聞き出そうと決め、兄妹として、私達は父親の捜索に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る