人生(生き方)とは
ザッザザー
まただ。また、うるさい音がする。私の耳の中にウンザリするくらい音がする。この音から逃れられる事は出来ないのか。否、今の私には出来ないのかもしれない。ただひたすら耐えなければならない。耐えねば、母のように死んでしまうかもしれない。私はまだ我慢をしなければならない。きっとそう。
20XX年3月15日。
私は中学校を卒業する。今まで、学校に言ってるのかと言えば行ってはいた。しかし、その中でも絶対と言うほど友人などこれっぽちも居なかった。
確かに私は学校でも、家でも、人目を気にして生きてきた。生きてきたけれども、それのせいか私自身がとても生きづらくも感じてはいた。
母は死に、その後私はどうしたかと言うと、警察からは里親を探すことになり、その里親が見つかるまでは養護施設に入るようになった。その間は私は、中学を卒業し、高校を探すまでは援助をすると言われ、私は今日中学を卒業するのを楽しみにしていた。かつて心苦しい施設で生活をしていた私に自由が訪れると思うとそれは大層舞い踊るくらいだった。
しかし、援助とはいえ、流石に十八も満たない子供である為、完全に施設を出ることは難しかった。だが、高校という逃げ場がある事が私にはとても喜ばしがった。中学では誰も助けてはくれない、私には目もくれず、ただひたすらに私を殺しにくる人ばかりが周りに多くいたのだ。それ程、治安もよくない。だからこそ母は殺されてしまったのだろう。
私は未だに殺された実感が湧かない。それはそうだ。行方がわからなくなって見つけたと思ったら突然死んでいたのだから。だから私は、私を奥底に隠し、その時が来るまで打ち明けないと決めたのだ。
ザッザザザザザザー
まただ、またこの雑音だ。私が不幸になる時は常にこの雑音が付き纏う。なんだ、一体なんなんだ。辞めてくれ、うるさいウザイ消えてくれ。私は以前のようにまた耳を塞ぎしゃがみこむ。今度は施設の男の子が私に話しかけてきた。
「お姉ちゃん大丈夫?」
健気な瞳をこっちに向けて、心配したのだ。
私は同じような光景を見て、何か違和感を持ったがそんなことよりも私は男の子にこう告げる。
「私は大丈夫だけど君誰?」
冷たくあしらってしまったけど男の子はオドオドしながらも名前を答えてくれた。
「僕の名前?僕は日和蓮だよ。宜しくね」
そう男の子は答えた。こんなにも冷たくあしらっ
た私に男の子は顔色を変えることなく接してくれた。私はそれが嬉しかったのだ。
これが蓮との初めての出会いだった。
私は蓮の歳を聞いた。なんと同い年だったのだ。同じ施設にいて14歳は私と蓮しかおらず、他のものは大抵12歳など年下が多かった。環境は私を除いて、虐待だったり捨てられたりしてこの施設にやってきたようだ。
蓮もまた例外では無い。私は4月に通信の高校に行く予定だと蓮に伝えたら蓮からは、
「僕も通信だよ奇遇だね」
そう答えてくれた。私はとても喜び、この人だったらきっと、そう期待してここに来た成り行きを聞いてみた。
蓮がこの施設に来る前は、父が失踪し、姉と二人で住んでいたらしいのだがその姉も見知らぬ男と一緒に出ていってしまい薬物を吸って逃げてしまったらしいのだ。
その父について、私もよく知らなかったと振り返ってみて初めて気づく。
ザッー
話してる間も少しの間雑音は続く。私はこの雑音の存在を少々忘れていたようだ。とても辛かった。苦しかった。なにか、原因が分かれば良かったのに、私はそう思い悲しみにくれた。
蓮とはついさっき別れた。用事があるとの事で。
蓮と別れたあとわたしは通信の入学式に向けて諸々手続きを始めた。
入学証明書と卒業証明書など提出しなければならない書類が多い為、私はその分の用意を自分でしなければと思い、着々と荷物を詰めた。
ザザザザザザー
突然大きな雑音が私を襲った。鼓膜が破れそうなくらい大きく私はたっていられないくらいに苦しんだ。早く止まれ止まってくれ嫌だ死にたくない。私はそう荒れまくり、気づいたら布団に居たのだ。
周りを見渡せど誰もいない。私は、いつの間に寝ていたのか時計を見て確認したのだ。
時はまだ22時、起きているか寝ているかは微妙な時間帯だった。私は不安を感じ、蓮のいる部屋へ向かってみた。しかし、蓮はいなかった。
母の光景がフラッシュバックし、私は冷や汗をかきながら蓮を探しに行った。蓮は向かい側で倒れていたのだ。でもおかしいと感じた。だってそこは。
部屋ではなく道路だったのだから。
ここの施設は中でもかなり車道に囲まれていて下手に外に出ると車に轢かれかねる可能性がある施設だったのだ。私は震える手を止めつつ様子を見に行った。
幸い、蓮は骨折程度で済んではいたが明らかにおかしかったのは見渡しのいい道路でなぜ車に轢かれていたかだ。何かしら人の手がないとそこにはいかないはずなのに何故?
そう考えてると後ろから人の気配がした。
そこに立っていたのは施設の親切なはずのおじさんであった。
「おや、まだ生きていたのかね犯罪者君」
そう、彼は蓮くんを道路に突き放した犯人であったのだ。先程冒頭でも話した通り、蓮くんの姉が薬物に手を出し、逃げたという話だが今では全国で指名手配されている為、蓮くんは面は割れはしなかったとも引き渡される際に職員の人には話をされていたのだ。
私は、オジサンをかっと睨み、オジサンは笑顔でどこかにいった。その後、蓮くんは救急車で運ばれ、一切施設に姿を出さなくなった。当然と言えば当然だ。命を狙われている施設に自分から居れる訳がない。私だって狙われていたら居れる訳が無いのだ。
また、私は一人になってしまった。私は自分に呪いをかけてしまったと悲しみでいっぱいになり、もう誰も信用が出来なくなってしまった。大切な人も失ってしまった。家族でさえも失ってしまった。私はずっと一人なのだと痛感してしまったのだ。
ザザッー
きっとこの雑音でさえ、私の敵なのだ。
痛みも苦しみも知らない、ただ与えるだけの存在の雑音。私は、きっと雑音の呪いにかけられているのだ。幸せにはきっとなれない。なってはいけない。1人で生き抜いていかなければ1人で探さなければ。
たった1人の父親を。正体不明の父親を探さなければ。私はこの雑音からも呪いからもきっと解放されないのだ。そう決意し、私はたった1人の消息不明の父を探そうと決めた。
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