第14話 約束忘れてる?
〝約束忘れてる?〟のワードをこんな短時間に二度も聞くような男もそうそういないだろう。いったいどこのプレイボーイなんだと言ってやりたいところではあるが、真実はそんな浮かれたような話ではない。
「ああ、えっとー、そのさ。上田、オカルト研究部の上田さんが熱を出してしまって……
それでちょっと家まで送っていったんだよ。そしたらさ、彼女どうやら一人暮らしらしくってさ……」
――言葉のチョイスがへたくそすぎた。
『ふーん。なるほど。つまりマコトは今、アタシとの約束をほったらかしにして一人暮らしの女の子の部屋に上がり込んでいるというわけね? しかもその子は弱っていて抵抗も出来ない状態にあると……』
「いや、えー、あの、いや、そういうことじゃなくてだな」
『うん、わかってる。わかってるから。そこ、場所教えて! 今からアタシも行くから!』
ななせが到着するのは早かった。少し息を切らしているようだったし、走ってきたのだろう。小さなアパートのとってつけたような簡易なキッチンに立ち、おかゆでも作ろうかと考えていたところだ。大した料理なんかはできないけれど、おかゆくらいなら僕にだってどうにか作れる。
「熱があるっていうのに、そんなもの食べたいわけないでしょ」
ななせの指摘は適切だったと思う。確かに僕だって、熱があるというのにそんなものを食べたいとは思わないだろう。ななせはコンビニの袋からゼリーを取り出してベッドのわきに並べた。
「何か僕にできることはないかな?」
情けないことに、僕はこんな時、何をしてあげればいいのかがわからなくてななせの指示を仰いでしまう。
「だいじょぶよ。あとはアタシに任せて。もう、帰ってもいいよ」
「いや、でも……」
「汗もかいているだろうし、着替えなきゃなんないでしょ。それともその間、ずっとそこで見ているつもり?」
「あ、いや……なんだかゴメン。力になれなくて……」
「そんなことないよ。マコトはできることをしてあげたんだからそれで十分じゃない。こっからはアタシができることする番ってだけだよ」
「わかった。後のことは任せるよ」
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