第9話 その正解とリベンジクイズ

「まず、下の段のライトグリーンのアイスだけど、色的にはシャインマスカットかホワイトチョコミントのどちらかということになるだろう。

 ところで上田は今日、部室で僕の淹れたコーヒーに砂糖やミルクはいらないと言ったよね?

 だから多分それほど甘党ではないと思うんだ。甘党じゃない人は結構ミント味が好きなものなんだよ。僕がそうだからね。つまりは下の段はホワイトチョコミントだ。

 そして問題の上の段。まず、それほど甘党でないならバナナ&ストロベリーは違うと思う。あれは結構甘さが強いからね。後はピーチブラマンジェ、ストロベリーリボン、ラズベリーチーズケーキ。

 うーん、むつかしいところだけど……ところでさ、上田は家、この辺りなのか?」


「ええ、そうですよ。実はすぐこの先なんです。ここの前は毎日通っているから、今日からスノーマンズキャンペーンが始まるとわかっていたのでとても楽しみにしていたんですよ」


「うん、ありがとう。おかげで答えがわかったよ。ラズベリーチーズケーキにはNEWのマークがついている。つまりこれは新作なわけで、さっきの話だと上田は毎日この前を通っているんだよね。それで今日からスノーマンズキャンペーンが始まると知っていた。

 だとすれば、おそらく昨日やおとといなんかにはわざわざ来ないだろうと思うんだよね。どうせ来るなら、キャンペーンが始まってからの今日になってからくるのが普通。だから新作のラズベリーチーズケーキは今まで一度も食べていない確率が高い。

 にもかかわらず、さっき上田はななせのラズベリーチーズケーキに対して『それおいしいですよね』と言ったんだ。つまり、既に新作の味を知っていたというわけだ、それはつまり、食べたことがあり、味を知っているという意味。

 君が食べているアイスは、ずばりホワイトチョコミントとラズベリーチーズケーキだ!」


「……………………ざんねん!」


「え、嘘だろ? もしかして、シャインマスカットだった?」


「違うわよ。そっちはホワイトチョコミントで正解」


 そう口にしたのはななせだ。しばらくショーケースを眺めていた彼女が返ってくるなり僕を諫めた。


「正解は、ホワイトチョコミントとストロベリーリボンよ」


「いや、まさか」


「そのまさか。伏見さんが正解よ」


「だってさっき上田はラズベリーチーズケーキの味を知っているふうな言葉を……」


「それは、その前に食べたからよ。上田さんは、アタシたちが来る前にラズベリーチーズケーキとシチリアオレンジソルベを食べていたのよ。今食べているのは二本目。つまり、ひとりで四玉食べているというわけね」


「そんなまさか……いや、でもなんでななせはそんなとこまでわかるんだ?」


「さっきお店の店員さんに聞いてきた。別に誰かに聞いちゃダメとか言われていなかったし」


「いや、それはそうなんだけど……」


「でも、盲点だったわ。まさか一人で二本食べていいなんて知らなかったから。てっきり、スノーマンズキャンペーンは一人一本までだと思い込んでいたわ」


「まあ、普通一人で二本食べようとする人はいないと思うんだけどね」


「ところでさあ、高野君。今高野君が食べているそのアイスクリーム、なんのフレーバーか当てさせてもらえないですか? もし正解したなら……」


「いいよ。もし当てることができたなら何でも言うことを聞こう。もちろん、今僕が頭の中で考えているようなことだってOKだ」


「いや、それは結構です。というか、本人目の前でそういう想像するのやめてもらっていいですか」


「想像するくらい自由だろ」


 言いながら、手に持ったアイスを上田によく見えるように差し出す。

 下の段が濃い茶色一色のアイスに上の段がライトグリーン一色のアイスだ。

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