祝福

 フラワーという言葉が野に咲く花ではなく、きみ一人を指すようになって二年。花の魔女から祝福を受けたこの国には緑が絶えない。放っておけば隣国までも飲み込みかねない花の海を、手入れして保つのがおれたち庭師の仕事だ。

「土地が変われば人の態度も変わるのね」

 きみは鋏を持つおれの後ろでぼやく。美しい花のドレスと魔女に相応しい老樹の杖。おれときみが来るまで、ここは荒廃した国だった。土地の痩せた弱い土地だから、故郷のように全てが自然に呑まれることなく、庭師が手入れするだけでバランスが保たれる。

「おれに付き合わなくたって、いつでもやめていいんだよ、サン」

「いいえ、わたしはあなただけの魔女よ」

 生母の腹を蔦で裂き、産声を上げた。そんなおれが、花の魔女が生き延びたのは、それでも我が子だと抱き留めてくれた腕と、村で唯一おれを恐れなかったきみのおかげだった。

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