Day.18 占い

 祖父の占いはよく当たる。仕事を変えた方が良いか、縁談は上手くいくか、株で成功できるかなど、あらゆる相談のたびに出す答えは八割の確率で当たるのだ。

 依頼人は近所の人がほとんどだけれど、たまに遠方からも来る。それだけ祖父の評判が轟いているのだろう。メディアの取材を断っていても、口コミで噂は広がっていった。

 自分も高校受験の際に占ってもらったことがある。受験予定の高校はここで、と伝えた途端、祖父は首を横に振った。

「その高校は将来的に事件が起きるね。とても物騒だから、こっちの高校にした方が良い。友だちもたくさん出来そうだ」

 祖父の言葉は本当だった。本来の志望校は数年後に治安が悪くなり、生徒が教師を階段から突き落とす危険行為も発生したのだ。占ってもらっていなければ、そんな環境に身を置く羽目になっていたかもしれない。

 なぜこんなに当たるのか、訊ねたことがある。自分も祖父みたいに、占いで人の役に立ちたかったから。すると祖父は灰色がかった目を細めた。

「平凡な自分が嫌いでね、神さまに『体の一部を差し上げますので、人とは違う力をください』ってお願いしたんだ。神さまはおじいちゃんの目が欲しいと言った。神さまは代わりに〝未来の光景ばかり映る目〟をくれた。良いことも悪いことも、将来なにが起こるのか全部分かる優れモノだよ。だからって聞かれたことを全部当てすぎても怖がられる。適度に外すのが大事なんだ」

 うまく商売出来ているだろう、と笑う祖父の顔は、どこか悪魔じみていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る