Day.16 レプリカ

 その博物館では世界の名品のレプリカを展示しているという。世界を救った勇者の剣、王妃を処刑に追いやった宝石、殺人気が愛用した椅子など、本物は曰く付きで表に出しにくいが故に、レプリカを並べていると先輩は言った。

「けどお前、付喪神って知ってるか。レプリカでもそれになるらしくてな。あいつら本物になりかわろうとして、毎晩博物館から出ようとしやがる。あいつらを逃がさないよう、朝まで寝ないでドアを押さえつけとくのが俺たちの仕事だ。てな訳で気合い入れろよ、新人」

 夜闇に沈む博物館の扉、誰もいないはずの内側からなにかがぶつかるけたたましい音が聞こえてくる。

 元気よく返事をすれば、先輩がニッと笑った。長い夜が始まる。

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