Day.12 門番
私の勤め先は周辺住民から〝飴色の館〟と呼ばれている。目に映る範囲のものが全てその色だから、とのことで、私もそれについて否定しない。
暮らしているのは家主たるお嬢さまただ一人。年齢は存じ上げない。初めてお会いしたのは五十年ほど前になるが、その頃から見た目が一ミリも変わらないのだ。
彼女は自室の窓際に腰かけて外を眺め、気に入った男がいれば屋敷に招き入れる。私はその一人になりたくて、自らこの屋敷の扉を叩いた。
しかし私はお嬢さまの好みに合致せず、ろくに話もせず追い返されそうになった。だからこんな提案をした。
門も玄関も鍵が開けっぱなしで、お嬢さまの部屋まで私はこうして易々と侵入出来た。これではいくらなんでも不用心である。お節介は承知だが、一人くらい警備員がいた方が安全ではないか、と。
「そうね。なら」お嬢さまは優雅に、けれど冷たく笑った。「門番になりなさい。お前みたいに分不相応に私に懸想する奴らを追い払って頂戴」
私は二つ返事で了承した。屋敷に勤めるに相応しい身だしなみを整え、来る日も来る日も門を見張り続ける。お嬢さまから「あの男、好みだわ。連れてきて」と命令が下れば、それを果たすのも仕事の一つだ。
男たちには共通点がある。肌が飴色になるほど日焼けしているのだ。屋敷にはお嬢さまのお気に入りを飾る部屋があり、招かれた男たちは皆等しく、そこへ納められる。
私もいつか、コレクションの一つに加えてもらえるだろうか。皺とシミだらけになった白い肌から目をそらして、私は今日も門を見張る。
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