因果の廻る小車の

 七不思議って知ってるか。

 五月、ゴールデンウィークに帰ってきた兄がそんなことを言っていた。まだ七歳だった僕は兄の言葉を信じて、詳しく聞かせてくれとねだったのだ。

 学校の怪談というものがある。

 人体模型が動くとか、骨格標本が笑うとか、音楽室の写真が血の涙を流すとか。

 有名なところだとトイレの花子さんとかそういうものもあったけれど、兄が聞かせてくれる七不思議というのは、僕はそれまでに聞いたことのないものだった。

 調

 兄は口の前で人差し指を立てて、僕にそう言った。それが二人の秘密のようで、内緒話のようで、僕はもっともっとと兄に詳しく聞きたがった。

 また夏休みになと、兄は学園へと戻っていく。

 全寮制の学校へ行った兄とは、長期休暇でなければ会うことができない。だから僕は次の夏休みという約束を楽しみに待っていたのに。


 それなのに、兄は帰ってこなかった。

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