鳥籠の学び舎
翠雪
プロローグ
プロローグ - 門出
少女が家を移るたびに減らされた荷物は、開発時には一泊の
右肩へ鞄を担いだ少女は、七時を過ぎてから起き出した同居人の誰とも言葉を交わさないまま、彼女を透明人間として扱い続けた親戚の家を立ち去る。令和十六年四月三日、気象予報士が予言する天気予報では、東京は一日中曇り空のはずだった。
「入学おめでとうございます!」
「立ち止まらず、右手にある受付へ進んでください」
「式に参加される保護者の方は、こちらにご記名を」
「すみませーん、撮影は通行の妨げとならないようにお願いしまーす」
――ここに、母さんも通ったんだ。
じわりと込み上げてきた
「入学おめでとう。寮へ送る荷物は?」
「これだけです」
受付で新入生の受験番号と名前を照合する係を任されていたのは、ハーフリムの眼鏡をかけた在校生だった。受付係の
「寮の部屋割りは、説明会の後に貼り出される予定だ。女子は
キャリーケースと交換された紅白の胸飾りを、安全ピンで左胸の生地に固定する。使い捨ての装飾と一緒に渡された
前の列が全て埋まり、ちょうど折り返すタイミングで入室した
──椅子へ
──ようやく。私が、私の時間を取り戻す番が来た。
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